植木義晴
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知識をそぎ落とすにはコツがあります。たくさんある知識の中から共通項を探し、自分なりの「ルール・オブ・サム」を作るのです。たとえば、いくつかの空港へのフライトを行なうとして、それぞれの空港に複数の滑走路があれば、数百通りもの進入経路・方式を頭に入れなくてはいけない。でも、すべての空港に共通するルールをひとつ作ってしまえば、どの空港にも応用できる。ただ知識を頭に放り込むだけでなく、それをもとに思考を掘り下げる作業をするから、「これを基準に判断すればいい」という一本の幹のようなものが自分の中にできるのです。
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会社として「社員を大事に思っているよ」「社員が一番大事だよ」と、そのような状態でなければ、お客様に対して最高のサービスをご提供することはできない。
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JALグループ企業理念をもう一度考え直しました。以前も企業理念はありましたが、心の底まで染みこんだものではなく、理念が存在することすら忘れていました。日本航空は誰のためにあって何を目標にするのか。シンプルな文章をつくりました。今、どの社員に聞いてもそれを答えられるはずです。
私は後輩のパイロットたちに「最初の5年間は新しい知識をどんどん頭に入れなさい。5年たったら頭の中を整理してファイリングしなさい。それが10冊になったとしたら、2年後には2冊に減らしなさい」と指導してきました。たいていの人は知識を増やしたがります。でも、本当に頭の良い人は、知識を削ぎ落とすことができます。シンプルに自分を作り替えることができた人だけが、適切な判断や素早い決断ができるのです。
パイロットを辞めて経営に加わることになったとき、私は自分の仕事人生に区切りをつけました。新たなステージに進んでいくのだから、過去の経験を引きずるのはやめようと思ったのです。私は写真など思い出の品をすべて捨てました。これからは経営をやっていくんだ、と気持ちを新たにするためです。
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大事なのは準備を丸一日かけたことではなく、それで十分な準備ができたかどうかです。
会社が潰れたんだと、認識したことが意識改革で一番大きなことだと思います。1便も欠航することなく、再建の道を歩ませていただいているんだ。潰されたのではなく、私たちが潰したんだ。私たちに責任があるという自覚をしたんです。
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一生懸命に努力していると、自分が日々成長していくのがわかります。なぜそれに気づけるのかと言うと、一週間前、あるいは一か月前の自分の発言を振り返って、「あのときはわかっていなかったな」と恥ずかしく思うことがあるからです。不思議なものですが、人間は何歳になっても、努力さえすれば進歩するものです。
努力しなければ、自分の仕事を好きになれないと思います。努力して、努力してひとつずつ課題を克服して達成するたびに、仕事が好きになっていきます。私のパイロット時代がそうでした。
どれだけ準備をしても、想定外のことは起こります。そのとき、それまでに何度も思考を重ね、問題を解決してきたプロセスが役に立つ。何千回、何万回も繰り返してきたからこそ、想定外の事態が起こっても、ごく短時間で最善の判断を下すことができる。
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私が社長に就任した当初から語ってきたのは、「世界一お客様に選ばれ、愛される会社」というメッセージです。世界一の売上げを達成しようとか、世界一の規模の航空会社を目指そうとは言っていません。それでも弊社が短期間で業績を回復し、世間の皆様にご心配をおかけしないだけの成果を出せたのは、社員一人ひとりがこの目標に向かって努力を積み重ねた結果です。
トップの本気を社員にどれだけ感じてもらえるかも重要。
構造改革では、部門別採算制度をとるなど確実に利益を生み出せる仕組みに変えていきました。また、社員が変わったといわれるのは、意識改革に取り組んでいるからではないでしょうか。
社員が一丸となるためには、明確な目標が必要です。企業理念が最終到達地ではありますが、もう少しわかりやすく会社の進む道を示したものが、中期経営計画です。この中期経営計画を会社のトップが勝手につくった目標と捉えるのではなく、社員全員が自分の目標に落とし込むことが大切です。
我々は、会社を辞めていった人ばかりでなく、破綻の過程で金融機関や株主様をはじめ多くの方々にご迷惑をおかけいたしました。「お詫びと感謝」、それは社員全員が一生忘れることはありません。まだまだ日本航空は道半ばですが、再建を実現することで、ご迷惑をおかけした皆さま、心ならずも会社を去っていった方々の気持ちに応えること、それが僕の大きな責務だと考えています。
構想の段階では、それを実行できるかどうかはわからないので、「これをやりたい」と思うことが大切です。次に、計画する段階では、準備を万端にし、あらゆる手を打っておかなければ、いざというときにものごとを自分の望む方向に進めることはできません。そして、実行に移すときは、また最初に戻って楽観的に実行するのです。楽観的にならないと、ものごとを進めることはできません。
社員が心からの笑顔で自分の仕事に誇りを持ってお客さまに接することで、自然と業績は上がっていく。
リーダーの中には、部下を叱ったり、危機感をあおってやる気を引き出そうとする人もいますが、私は「自分たちはどんな会社を目指すのか」という夢や理想を社員全員で再確認し、そこに向かって一丸となって進んでいきたい。そのほうが社員の士気は高まると信じているからです。
社長就任から一年半ほど経った頃、ふと「社員と一緒に悩めばいいんじゃないか」と気づきました。それまでは、辛さや苦しさはトップである自分が引き受けて、社員には幸せや喜びだけを分け与えなくてはいけないと考えていました。でも本当は、社長も社員も同じ目標に向かう仲間ですよね。だったら、辛さや苦しさを分け合ってもいいのでは。そう思えた瞬間から、気持ちがとてもラクになったし、前向きになれました。
私の考える知識とは、記憶するものではなく、使うものです。
植木義晴のすべての名言