井上ひさし
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文章を書く相棒というのは、原稿用紙のむこうにいる読者でもあれば、自分の長期記憶でもあるんです。その相棒と手を繋いで書いていく。
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喜劇役者たち。
戦争の時だって、反対する人はいました。でも、そのときの空気がそれを認めなかった。私たちは空気で動き、空気が先導した結果だから、誰も責任を取らないんです。
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天皇を利用した人、それに無批判に乗った人、天皇が神の子孫だとかそういうことを真に受けた人、つまり庶民の責任は大きいと考えます。庶民が一人一人考える、自分なりに意見を持つ、それが代議制として政治に反映される、そうならないといけないでしょう。
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物書きは、内証のことはとにかく、外面は「誠実」が第一、そして取りこぼしをせぬのが第二に大事。「なんだあいつは。ひょっとしたら馬鹿か」などといわれたくありません。せっかくこれまで、それだけは、と隠し通してきた苦心がすっかり水の泡になってしまうではありませんか。
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十二人の手紙。
物語の基本的要素は「謎」である。逆に言うなら、謎の提起とその解明、これこそが物語の正体なのだ。
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人間の身体を使う演劇にはかるがると国境を越える力があります。
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戦争を起こすのは、私たち自身です。
新釈遠野物語。
不況でまっさきに売れ行きの落ちるのは紳士もので、次が婦人もの、そして最後まで安定しているのが子どもものだそうである。子どもをできるだけ辛い目にあわせたくない、という親心がこの短い噂ばなしに滲み出ている。
どんなお説教も現実では役に立ちませんが、でも一つのいい芝居で人間の精神の根幹を変えられるんです。
世界には自分が正しいということを信じて、その考え方を他国に強制しようという原理主義的な態度をもった人たちがいますが、人というのは矛盾の塊だし、人であれ国であれ、良いところもあれば悪いところもあるのだから、お互いの良いところを認め合うようにしないといけませんね。
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ドン松五郎の生活。
第九条があるということは日本が世界に誇るべきことのひとつなのです。
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劇場で我を忘れるひとときだけ、その時間の支配から逃れられる。
貧乏で生活が苦しい時に、「お金が欲しい、お金が欲しい」と言っていたのでは、人間落ち込むばかりです。そこで黄表紙では、絶対にありえないとわかっていながら、金が貯まり過ぎるというユーモラスな話を仕立て、金があるとか無いとかという次元を突き抜けてみたわけです。
どうしても米の話。
発言者の圧力が通って、みんなが黙ってしまい、会議はなんとなくおしまいになる。こういう事態を避けるために、二人以上が同意見であれば、議案として採用すべきであるが、一人だけ力まかせの乱暴をいっているなら、それは無視してよろしい。
核兵器の存在自体が人間の精神にマイナスの強い影響を与えるものなのです。そのことを知って欲しいし、自分たちは今どういう環境を生きているのか、今後どんな地球を創りたいのか、ともに考えられればと思っています。
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