土光敏夫
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「仕事の報酬は仕事である」とは、藤原銀次郎さんの言葉である。賃金と仕事の関わり合いについては、いろんな立場からの様々な議論があろう。けれどもそれらを超えていることは、人間の喜びは金だけからは買えないという一事である。賃金は不満を減らすことはできても、満足を増やすことはできない。満足を増やすことのできるのは、仕事そのものだといわねばならぬ。どんな仕事であろうと、それが自発的主体的に行動できるような仕事になってくれば、人々はそこから働きがいを感ずるようになるのだ。
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当社が日本の一角にあるとの観念を一擲せよ。国境を意識するな。
考えるより当たれ。体当たりによって生きたアイデアが生まれる。
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自分は聞いていない。誰かがやってくれるだろう。組織のエネルギーを燃焼させるために、まずこの二つの言葉を追放しよう。
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どんな人にも長所と短所が必ずある。ところがサラリーマンの会話を聞いていると、短所をあげつらう減点主義が横行している。これでは人の心を腐食するばかりで職場の活力も失われてしまう。
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中央への、上司への敬語過剰を排せ。
相互信頼を本物にするため、まず自分が他から信頼される人になる。信頼される人になるためには、どのような行動基準が求められるのか。この五カ条はわかりきったことかもしれない。しかしわかりきったことが、なかなか行えないのである。一、相手の立場になって物を考える一、約束をきちんと守る一、言うことと行うことを一致させる一、結果をこまめに連絡する一、相手のミスを積極的にカバーする。
常に将来へのビジョンを描いておけ。それが人々に希望を植え付ける。
やるべきことが決まったならば、執念をもってとことんまで押しつめよ。問題は能力の限界ではなく、執念の欠如である。
コストダウンにはタネ切れはない。目のつけどころとやり方次第。
人によっては失敗を契機として転身することもあるし、旧弊をかなぐり捨てて悟ることもある。とにかく人間は変わるという一事を忘れてはならない。
いつの時代を見ても「今の若い者は、実によくやっている」なんて年寄りがいってきた時代はないはずなんだ。昔から「今の若い者はどうしようもない。世の中は悪くなる一方だ」と、年寄りはぼやいてきたんだ。だからといって、ぼやいてばかりもいられない。年寄りはどんどん荷かけ役をやって、若い人たちに荷物を背負わさねばならない。おしなべて考えれば、世の中は悪くなった面も少しはあるかもしれないが、良くなったほうが多いに決まっている。世の中そういうものだ。
会社に来て自分の仕事をすることが、極上の道楽である。
危険を避けるな。失敗を恐れるな。
死んだあとのことは引き受けてやるから、死ぬ気でやれ。
組織はダイナミックでなければならない。たとえばルールを作っても、はじめたときは新鮮味があるが、ちょっとたつとマンネリになってしまう。今日決めたことでも翌日になると必ずいくらかのマンネリが生じているんだと私は言っている。企業は絶えずダイナミックでなければならない。清水でも動かなければ腐ると言われる。組織体には絶えず揺さぶりをかけておく必要がある。
そもそも「経済」なんてものは、辞書で引くと「経国済民」でしょ。これを忘れちゃいけませんよ。進歩しながら、前進しながら、安定した経済世界をつくるということが目的ですから。
本来の情報は天然色なのだが、幹部の持つ情報は単色情報になりがち。そんな薄まった情報に基づいて判断したら大変。単色情報を天然色情報に戻すためには、自らの足で現場を歩き、自らの目で現場を見て、現場の空気を味わい、働く人々の感覚に直に触れること。
僕は石川島でもそうだったけど、社員をクビにはしない。役付取締役に全部平取締役になってもらった。ウエットといやあウエットだけど逆なんだ。人はすぐあれはこの点が駄目だと欠点を言うじゃないですか。神様はそんなことしませんね。誰だって長所があるもんだ。長所を見ないで人事をやるなんておかしいですよ。そういうところで外れた人はぼくの直属にします。それが僕のやり方。意見は言います。熱を入れてしゃべるから社長は怒ったなんて誤解されることもあるが、ぼくは怒ったことなんてないんだ。
年寄りは先に死んでいくんだから、どんどん若い人たちが中心にやってもらわなければダメだ。
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