土光敏夫
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上司へのリーダーシップをうまく取れない人が、どうして部下へのリーダーシップをうまくこなすことができようか。上へのリーダーシップといえば、奇矯というかもしれぬ。しかし我が国では、あまりにも上下の差別が強すぎると思う。たしかに、年齢や勤続年数や賃金では上下の差がある。だが一人一人が担う職能は、横に並んでいると考えたい。横に並んで切磋琢磨するのである。このように考えれば、リーダーシップは上へ向かっても発揮されなければならない。
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会社に来て自分の仕事をすることが、極上の道楽である。
危険を避けるな。失敗を恐れるな。
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そもそも「経済」なんてものは、辞書で引くと「経国済民」でしょ。これを忘れちゃいけませんよ。進歩しながら、前進しながら、安定した経済世界をつくるということが目的ですから。
本来の情報は天然色なのだが、幹部の持つ情報は単色情報になりがち。そんな薄まった情報に基づいて判断したら大変。単色情報を天然色情報に戻すためには、自らの足で現場を歩き、自らの目で現場を見て、現場の空気を味わい、働く人々の感覚に直に触れること。
人と機械の原価計算をして、どちらが安くつくかという考え方では、これからは通らなくなる。人間には人間らしい仕事をしてもらうという立場から、取り組むべきだろう。そうでなければ人々は喜んで企業にとどまってくれなくなる。
真実を敬語で覆うことをやめること。率直さを敬語で失うことをやめること。中央への、上司への敬語過剰は排すること。
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「いまの若い者は、よくやっている」と、言ってきた年寄りは、いつの時代だっておりゃしなかった。昔から「いまの世の中は悪くなった」と、年寄りはボヤいてきたんだ。しかし、悪くなった面も少しはあるが、良くなった方が多いだろう?そういうものだよ。
「できません」「どうしたらよいでしょうか」「あしたにしよう」こんな言葉を職場から追放しよう。
誰にも火種はある。必ずある。他の人からもらい火するようでは情けない。自分の火種には自分で火をつけて燃え上がらせよう。
自分の物差しで自分を図る。他人に頼らず甘えないための試金石だ。
会社で働くなら知恵を出せ。知恵のない者は汗を出せ。汗も出ない者は静かに去っていけ。
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60点主義で決断せよ。決断はタイムリーになせ。決断すべときに決断せよ。
「活力=知力×」。活力は単なる馬力ではない。そのベースは知力。だが活力にとって、知力は必要な条件だが、十分な条件ではない。十分な条件とは、その知力を成果として結実させる行動力。その行動力の重要な要素が、意力・体力・速力。
自らが真剣に仕事に打ち込む。自らの足りなさを省みる。そういった身を持って示す真剣勝負こそが部下への最上の教育となる。部下は管理者の鏡なのである。
信頼される人というのは、相手の立場になって考える人、約束を守る人、言うことと行うことを一致させる人、結果をこまめに連絡する人、相手のミスを積極的にカバーする人だ。
きみ、油ショックみたいにいうけど、逆に油ショックがなかったとしたら、いまの日本はどうなっていたと思う?48年までの高度成長が52年まで続いたと思うかね。油ショックは、そういう意味では「天の報い」でもあり「禍転じて福となす」といったきっかけで捉えなければ、まったくもって意味がないじゃないか。
考えるより当たれ。体当たりによって生きたアイデアが生まれる。
リスクの大きさと利益の大きさは比例するものだ。リスクが小さければ、誰もがその機会を追及するから、利益も小さい。逆にリスクが大きければ、得られる利益は大きい。利益とは、リスクに対する対価だと言わねばならぬ。
問題とは、けっして日々解決を迫られている目前の問題をさすのではない。真に我々が取り組むべき問題とは、現状にとらわれずに「あくあるべき姿」の中に見出す不足部分をさすのである。問題意識を持つことは、このギャップを意識することを言う。問題はかくあるべき姿を求めて、日々真剣に自己の任務を掘り下げ追求し続ける意欲のある人の目にのみ、その真の姿を現す。問題とは、発見され創造されるものなのだ。
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