土光敏夫
3
「仕事の報酬は仕事である」とは、藤原銀次郎さんの言葉である。賃金と仕事の関わり合いについては、いろんな立場からの様々な議論があろう。けれどもそれらを超えていることは、人間の喜びは金だけからは買えないという一事である。賃金は不満を減らすことはできても、満足を増やすことはできない。満足を増やすことのできるのは、仕事そのものだといわねばならぬ。どんな仕事であろうと、それが自発的主体的に行動できるような仕事になってくれば、人々はそこから働きがいを感ずるようになるのだ。
1
行動となって現れないような思考は無用であり、時に有害でさえある。思考と行動は相互作用を積み重ねながら成熟していくもので、その中から生きたアイデアが生まれてくる。行動は思考の芽を育て伸ばす触媒なのだ。
2
当社が日本の一角にあるとの観念を一擲せよ。国境を意識するな。
自分は聞いていない。誰かがやってくれるだろう。組織のエネルギーを燃焼させるために、まずこの二つの言葉を追放しよう。
5
人が人に向かってとる態度には、四つの類型がある。自分にも厳しいし、相手にも厳しい。ある心理学者によれば、職場における上司の自己評価は3、4に集中し、部下に上司を評価させると1、2に集中する。ここで言いたいのは、人に向かって厳しさに欠けることがあるのは、自分自身に厳しくなかった証拠だ。管理者が部下をよく管理するためには、まず自らを管理することが必要なのである。
常に将来へのビジョンを描いておけ。それが人々に希望を植え付ける。
中央への、上司への敬語過剰を排せ。
0
やるべきことが決まったならば、執念をもってとことんまで押しつめよ。問題は能力の限界ではなく、執念の欠如である。
人によっては失敗を契機として転身することもあるし、旧弊をかなぐり捨てて悟ることもある。とにかく人間は変わるという一事を忘れてはならない。
コストダウンにはタネ切れはない。目のつけどころとやり方次第。
会社で働くなら知恵を出せ。知恵のない者は汗を出せ。汗も出ない者は静かに去っていけ。
8
上司へのリーダーシップをうまく取れない人が、どうして部下へのリーダーシップをうまくこなすことができようか。上へのリーダーシップといえば、奇矯というかもしれぬ。しかし我が国では、あまりにも上下の差別が強すぎると思う。たしかに、年齢や勤続年数や賃金では上下の差がある。だが一人一人が担う職能は、横に並んでいると考えたい。横に並んで切磋琢磨するのである。このように考えれば、リーダーシップは上へ向かっても発揮されなければならない。
会社に来て自分の仕事をすることが、極上の道楽である。
死んだあとのことは引き受けてやるから、死ぬ気でやれ。
危険を避けるな。失敗を恐れるな。
そもそも「経済」なんてものは、辞書で引くと「経国済民」でしょ。これを忘れちゃいけませんよ。進歩しながら、前進しながら、安定した経済世界をつくるということが目的ですから。
本来の情報は天然色なのだが、幹部の持つ情報は単色情報になりがち。そんな薄まった情報に基づいて判断したら大変。単色情報を天然色情報に戻すためには、自らの足で現場を歩き、自らの目で現場を見て、現場の空気を味わい、働く人々の感覚に直に触れること。
諸君にはこれから3倍働いてもらう。役員は10倍働け。俺はそれ以上に働く。
人と機械の原価計算をして、どちらが安くつくかという考え方では、これからは通らなくなる。人間には人間らしい仕事をしてもらうという立場から、取り組むべきだろう。そうでなければ人々は喜んで企業にとどまってくれなくなる。
年寄りは先に死んでいくんだから、どんどん若い人たちが中心にやってもらわなければダメだ。
土光敏夫のすべての名言