土光敏夫
1
人生には予期せぬ落とし穴がついて回る。
いつの時代を見ても「今の若い者は、実によくやっている」なんて年寄りがいってきた時代はないはずなんだ。昔から「今の若い者はどうしようもない。世の中は悪くなる一方だ」と、年寄りはぼやいてきたんだ。だからといって、ぼやいてばかりもいられない。年寄りはどんどん荷かけ役をやって、若い人たちに荷物を背負わさねばならない。おしなべて考えれば、世の中は悪くなった面も少しはあるかもしれないが、良くなったほうが多いに決まっている。世の中そういうものだ。
組織はダイナミックでなければならない。たとえばルールを作っても、はじめたときは新鮮味があるが、ちょっとたつとマンネリになってしまう。今日決めたことでも翌日になると必ずいくらかのマンネリが生じているんだと私は言っている。企業は絶えずダイナミックでなければならない。清水でも動かなければ腐ると言われる。組織体には絶えず揺さぶりをかけておく必要がある。
2
問題を見つけ問題をつくりだせ。問題がなくなったとき組織は死滅する。
失敗は終わりではない。それを追求していくことによって、はじめて失敗に価値が出てくる。失敗は諦めたときに失敗になるのだ。
3
やり甲斐、働き甲斐は、やってみてはじめて出てくる。
どんな人にも長所と短所が必ずある。ところがサラリーマンの会話を聞いていると、短所をあげつらう減点主義が横行している。これでは人の心を腐食するばかりで職場の活力も失われてしまう。
0
年寄りは先に死んでいくんだから、どんどん若い人たちが中心にやってもらわなければダメだ。
相互信頼を本物にするため、まず自分が他から信頼される人になる。信頼される人になるためには、どのような行動基準が求められるのか。この五カ条はわかりきったことかもしれない。しかしわかりきったことが、なかなか行えないのである。一、相手の立場になって物を考える一、約束をきちんと守る一、言うことと行うことを一致させる一、結果をこまめに連絡する一、相手のミスを積極的にカバーする。
常に将来へのビジョンを描いておけ。それが人々に希望を植え付ける。
相互信頼を本物にするために、まず自分自身がほかから「信頼される人」になろうと努めよ。信頼を相手に要求してはならない。
幸せというのは自分で作るものだ。決して他人から与えられるものじゃない。
5
「仕事の報酬は仕事である」とは、藤原銀次郎さんの言葉である。賃金と仕事の関わり合いについては、いろんな立場からの様々な議論があろう。けれどもそれらを超えていることは、人間の喜びは金だけからは買えないという一事である。賃金は不満を減らすことはできても、満足を増やすことはできない。満足を増やすことのできるのは、仕事そのものだといわねばならぬ。どんな仕事であろうと、それが自発的主体的に行動できるような仕事になってくれば、人々はそこから働きがいを感ずるようになるのだ。
行動となって現れないような思考は無用であり、時に有害でさえある。思考と行動は相互作用を積み重ねながら成熟していくもので、その中から生きたアイデアが生まれてくる。行動は思考の芽を育て伸ばす触媒なのだ。
若い人に賭けられるも、賭けられないもないよ。賭けるしかないじゃないか。歴史を見てみい。みんなそうして、今日があるんだよ。
当社が日本の一角にあるとの観念を一擲せよ。国境を意識するな。
考えるより当たれ。体当たりによって生きたアイデアが生まれる。
自分は聞いていない。誰かがやってくれるだろう。組織のエネルギーを燃焼させるために、まずこの二つの言葉を追放しよう。
ルールが悪ければ、ルールを改める勇気を持て。
人が人に向かってとる態度には、四つの類型がある。自分にも厳しいし、相手にも厳しい。ある心理学者によれば、職場における上司の自己評価は3、4に集中し、部下に上司を評価させると1、2に集中する。ここで言いたいのは、人に向かって厳しさに欠けることがあるのは、自分自身に厳しくなかった証拠だ。管理者が部下をよく管理するためには、まず自らを管理することが必要なのである。
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