平尾誠二
7
私はよく「リーダーは面白くてためになる話をしろ」と言っています。「今日は倒れないでプレーしろ」と言われるより、一言、「今日は短パンを汚すな」と言われた方が、どういう意味だろうとその先を聞きたくなるでしょ。もちろん、部下の「ためになる話」でなければ意味がありません。
コーチをやっている人で、自分のエゴだけでやっている人がいます。自分の思いや伝統などを言う人がいますが、それは大きな間違いです。
4
僕は厳しいです。でも厳しい練習をする時は、理由をきちんと説明して、それを越えさせます。逃げ道も作りません。
8
上達のためのアドバイスなどは、部下が実際にやってみて効果が出ることが、非常に大切です。実際に上達すれば、「この人の話は聞いた方が得だ」と思ってもらえますし、自分からアドバイスを求めてくるようになります。
16
人間は、本当に上手になりたいと思ったときにこそ、学習能力を発揮するんです。
10
ひどいミスをして監督から呼び出され、いつもなら頭から怒鳴られるところを、「次から頑張れ」としか言われなかったら、そのミスは怒鳴られるより、よっぽど印象に残るでしょう。私自身、監督やコーチから言われたことでいまでも覚えているのは、いずれも意外性のある言葉ばかりです。
9
どんな優秀なリーダーでも、持っているネタには限りがあります。なのに、部下に毎日のように話をしていたら、すぐネタが尽きて飽きられてしまいます。すると、肝心な時に相手が興味を持つ新鮮な言葉が見つからない、ということにもなりかねません。ですから、少なくともとっておきのネタは、いざというときに温存しておくんです。
「おまえたち、ここで負けたら恥だぞ!!」とか言う監督がいたとしたら、それは選手の恥ではなくて、監督の恥なんですよ。
11
指導者も試合前にあれこれいうようじゃダメです。持っている力を出せばいいだけだと試合前に言ってあげればいいだけなんです。その位広い度量をもってほしいですね。
17
10人を前に話すとき、リーダーにとっては1体10ですが、部下はそれぞれ1対1だと思って聞いています。だから私は、これはとくにあいつに聞いてほしいという部分が来ると、その人間の顔を見ます。そうすると、いま自分だけに話しかけてくれているという気持ちになって、真剣に聞こうという気持ちになるのです。
21
ダメだったら次の機会に試す。でもまたダメだったらまた次に試す。そして達成できたら、それは自分の実力になっているという事なんです。
私は、リーダーが怒るということは、あまりいいことだとは思いません。よく、「うちのチームは、俺が怒るからいいプレーができるんだ」という指導者がいますが、だから怒った方がいいというのは理屈に合わないでしょう。怒られたからできたというのは、もともとそれができるだけの力があったのです。だから、この場合は、怒られるまで力を出さない個人やチームにこそ問題があると考えなければいけません。
42
部下への指示は最初からあまり細かいところまで決めないことです。むしろ、「ここだけは」という肝心のポイントだけ伝わればいいと考え、指示にはなるべく隙間をつくっておいた方がいいでしょう。そうしないと、部下がイマジネーションを発揮する余地がなくなってしまいます。部下に一律に同じことをやらせる方が効果的という考え方にも一理あります。ただし、それでは個々のモチベーションはあがりませんし、組織のパフォーマンスもすぐに頭打ちになってしまいます。
6
当然勝ちたいと思ってプレーするんですが、自分の実力以上の事は期待しない方がいいです。
個人の内発的なモチベーションを重視するコーチングの考え方は、私自身の考え方と非常に近いものがあります。ただ私は、「強制して何かをやらせること」を全否定しているわけではありません。スポーツでも仕事でも、明らかに基礎力が不足している場合は、自由を与えても楽しめませんから、反復練習のようなことを強制的にやらせることもやむを得ないでしょう。
5
例えそれで試合に負けたとしても、死にはしないし、また次があります。
20
人間は練習に対して、やりたい量とやらなくてはいけない量のバランスがあって、やりたい量が多い時は、いくら練習をしても足りない位に感じるのですが、やらなくてはいけない量がそれを圧倒的に上回ると、気持ちはなえるんですよね。
高校時代の恩師である山口良治先生の指導法はスパルタ方式で、入学した当初は、練習が嫌で嫌で仕方がありませんでした。しかし、苦しい練習を強制させられているうちに、自分が強くなっていくのが実感できました。それで練習が面白くなって、結局、先生に言われなくても、自発的に練習に取り組むようになりました。
部下に仕事を強制させる場合は、事前にそれをやらせる意味をきちんと説明することと、必ず結果を出させ、これができるようになったということを、本人にわからせることが重要です。人間というのは現金なもので、最初は嫌々でも、やればできると味をしめた途端、次からは自ら進んでやるようになるものなのです。
山口良治監督の練習は並みのキツさではありませんでした。あの練習を我慢できたら、世の中でおこる大抵のことが我慢できるという位のキツさでしたね。
平尾誠二のすべての名言