白石康次郎
1
人生においてね、使っていいものって三つしかない。「愛と夢と忍耐」。
8
海ってね、人間が創り出したものじゃないんです。
何カ月にも及ぶレース中も、ヨットの上で毎日ヒゲを剃ります。なぜなら僕にとっては、それもやるべきことだから。心身の準備を整えることが目的ですが、実際問題、船底などで何かトラブルが発生すれば、水中メガネを着けて自分で修理に行かなければなりません。そのときヒゲが伸びていると、そこから水が入ってきて困るという理由もあるんです。
夢を見るのに理屈はいらない。
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恐怖は陸に置いてくる。
死ぬまで試練のない人生なんてどこにもない。
風だけの力で地球を体感したかった。
結局「壁」を作り出しているのは人間の心。行く手を阻む風の大波を困難だと感じたり、恐れたりするのは人間です。波は波でしかない。大自然を前にすると、ジタバタしても始まらない。淡々と冷静に最善をつくすだけ。
自分自身の体で動かない限り、何事も身につかない。
2
学んだことの中にはいいことばかりじゃないですよ。
僕は自分のやってきたことを偉業だなんて思っていません。ヨットでの世界一周も、5オーシャンズで表彰台に上がったことも、それをやりたいと思う自分の心に素直に従っただけです。
幸せな人間でないと幸せを教えられません。
僕がまだ高校生のとき、「一人乗りのヨットで世界一周」という目標を立てたものの、実現させる術は、まったく見当がつきませんでした。でも、悩んでいたって埒があきません。とりあえず先駆者たちがどうしたのかを勉強しようと思い、ジョン万次郎から植村直己さんまで、ヨットや冒険に関する本を手当たり次第に読んでいきました。そのとき出会ったのが、のちの僕の師匠・多田雄幸さんの本でした。そこには、まさに当時の僕の欲しかった情報がすべて網羅されていたのです。
自分の未来に枠をつくるなんて、寂しいよね。
どんな茨の道だろうが、どんな不可能と言われようが、とにかく自分の心の向いた方に行く。
失敗も成功も覚悟の上です。死ぬことだってあるんだから。
実際に行動を起こすことが重要です。高校生のとき、多田雄幸さんの本に感銘を受けた僕は、東京駅まで行って、電話帳で多田さんの電話番号を調べて会いに行きました。いま考えればずいぶん無鉄砲なやり方ですが、でも、あそこで思い切って第一歩を踏み出さなければ、その後の世界最年少世界一周も、「5オーシャンズ」2位も、僕の人生にはありませんでした。
正直に言えば、若いころは世界一周をもっと簡単にできるものだと考えていました。でも朝顔だって、種を蒔いた翌日にすぐ芽は出ませんよね。ともすれば、人間はすぐ結果を欲しがりますが、「時」が来なければ芽は出ないし花は咲かない、それが自然の理なのです。
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「人生って楽しいよ」「好きなことをしなさい」という人は、きっと幸せそうな顔をしている。
俺ってね船酔いが激しいんですよ。
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