白石康次郎
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もっと自分を高めていかないといけない。
僕がまだ高校生のとき、「一人乗りのヨットで世界一周」という目標を立てたものの、実現させる術は、まったく見当がつきませんでした。でも、悩んでいたって埒があきません。とりあえず先駆者たちがどうしたのかを勉強しようと思い、ジョン万次郎から植村直己さんまで、ヨットや冒険に関する本を手当たり次第に読んでいきました。そのとき出会ったのが、のちの僕の師匠・多田雄幸さんの本でした。そこには、まさに当時の僕の欲しかった情報がすべて網羅されていたのです。
心配事の8割は起こらない。
正直に言えば、若いころは世界一周をもっと簡単にできるものだと考えていました。でも朝顔だって、種を蒔いた翌日にすぐ芽は出ませんよね。ともすれば、人間はすぐ結果を欲しがりますが、「時」が来なければ芽は出ないし花は咲かない、それが自然の理なのです。
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1回失敗したくらいでくよくよしてたら笑われちゃう。
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僕は自分のやってきたことを偉業だなんて思っていません。ヨットでの世界一周も、5オーシャンズで表彰台に上がったことも、それをやりたいと思う自分の心に素直に従っただけです。
情けなさで逃げ出したくなりましたが、目標を変更しようという気にはなりませんでした。僕が心からやりたがっていたのはあくまで世界一周で、それ以外の何ものでもなかったからです。逆に二度の失敗でも揺らがないほど強く成功シーンをイメージできていたからこそ、達成することができたともいえます。
ゴルファーの丸山茂樹さん以外にも、海外ツアーに挑戦した日本人ゴルファーは何人もいますが、彼ほどの成績を残している人はいません。丸山さんと他の人たちの違いは、早い段階から世界を意識してプレーしてきたかどうかだと思うのです。その意識こそが、彼の華々しい活躍を支えているのではないかと僕は考えます。
結局「壁」を作り出しているのは人間の心。行く手を阻む風の大波を困難だと感じたり、恐れたりするのは人間です。波は波でしかない。大自然を前にすると、ジタバタしても始まらない。淡々と冷静に最善をつくすだけ。
状況は変わらなくても、向きを変えれば見え方が違ってくる。
何カ月にも及ぶレース中も、ヨットの上で毎日ヒゲを剃ります。なぜなら僕にとっては、それもやるべきことだから。心身の準備を整えることが目的ですが、実際問題、船底などで何かトラブルが発生すれば、水中メガネを着けて自分で修理に行かなければなりません。そのときヒゲが伸びていると、そこから水が入ってきて困るという理由もあるんです。
僕が頑張ろうが頑張るまいが、自然はそんなこと考慮してはくれません。同じように、どんなに完璧な準備をしたとしても、次に僕が世界一周できる保証はありません。結果なんて誰にもわからないのだから、考えても仕方がない。それよりも、やれることをやって、失敗したらそれを受け入れることが重要です。
よく諦めちゃいけないって言うんだけど、あれって悪い決断じゃないんですよ。諦めるって明らかに見極めるって意味なんですよ。
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僕は船に弱くて、いまでも航海に出て数日間は、船酔いで死ぬような思いをしています。また、ヨットはとにかくお金がかかるというのに、僕は大金持ちでもなければ、大スポンサーもいない。だから、船に乗っていないときはいつも、必死で資金集めに走り回っています。こんな僕のどこが、才能や環境に恵まれているといえますか。
何より大事なのは平常心。体のちょっとした傷口から雑菌が入り込むように、心もほころびがあると、そこから不安や油断が広がって、正しい判断ができなくなります。だから、激しい嵐の中でも、まったく風が吹かない凪のときも、普段どおりやるべきことをやる。そうして1マイル1マイル積み重ねた先に、ゴールがあるんです。
海ってね、人間が創り出したものじゃないんです。
人生においてね、使っていいものって三つしかない。「愛と夢と忍耐」。
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恐怖は陸に置いてくる。
夢を見るのに理屈はいらない。
失敗を受け入れられるようになるには、何度も試練を経験して、「精神筋肉」を鍛えるしかないと思います。
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