永守重信
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一番以外はビリと同じと考える私は、企業経営でもこの姿勢を貫き通しています。製品については世界一の品質と精度を堅持し、市場のシェアでも決して二位、三位に甘んじてはならないと自分に言い聞かせています。また、営業力やマーケティング力においても同業他社に絶対に後れをとってはならないと考えています。もちろん、人材についても一流、一番を目指しています。このために、私は「あらゆる努力」と「とことん謙虚」という心情を持ちたいと思っています。こうした信念がなければ、経営者になるべきではないとも思っています。
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危機に強い人間とは、挫折を経験した人間。
日本では嫌な相手に買収されるくらいなら、月給を倍にしてくれても辞めますと言う人もいる。会社のオーナーが誰かということは極めて大事なことなんです。もちろん、会社は誰のものかといったら、本来は株主のものです。ところが従業員が辞めていなくなってしまったら、会社の存続が危うくなる。日本人の国民性が変わるなら、企業買収のあり方も変わってくるでしょう。
昔は築城3年、落城1日。いまは築城3年、落城3時間。
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立派な経営者になるためには出来る限り多くの挫折の経験とジャッジの回数が必要です。
現場従業員の気持ちをつかまなければ、メーカーは絶対に強くなれません。だから現地語の習得が不可欠なのです。望ましいのは日本人社員が現地語をマスターすることです。それが無理なら、相手国から日本への留学生を採用してオペレーションにあたらせます。このことは絶対に疎かにできないと思っています。
世界中で儲かっているどの会社を見ても、みんな状況変化に対する反応が速い。競争に勝つには、意思決定のスピードを上げるしかない。
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下の人間が動くかどうかは、上の人間次第。
メーカーがモノづくりを捨ててはいけない。
日本の企業は、自社の得意分野を持ちながらも、それらと掛け離れた分野にまで手を広げて巨大化してきました。しかし、日本電産はモーターを中心とする「回るもの、動くもの」にこだわり、専門分野をさらに深く堀り進めることによって新たな鉱脈を探り出し、業容を拡大していきたいと考えています。日本一から世界一を目指し、これをゆるぎないものにするためには、一意専心の精神が大切だと思っています。米国にはインテル社、マイクロソフト社など、一つの分野に特化して巨大企業に成長している例がありますが、わが社もこの方向を目指したいと思っています。
最近の若手は海外勤務を嫌がらず、むしろ心待ちにしているようなのです。彼らの姿に接し、私は日本電産が将来ますます強い会社になると確信しています。もっとも、日本全体を眺めると、こうしたアグレッシブさはずいぶん薄まってきているように思われます。この意識を変えなければ、急激な国力の低下は押しとどめようがないでしょう。
嫌なことも悲しいことも経験すればその分喜びも大きくなる。
若い時の失敗、挫折の経験が立派な経営者をつくる。
最近はそこそこの企業に対して敵対的買収をしかけるのが流行りのようになっています。しかし、ああいう手法で成功する確率は、日本においては限りなくゼロに近いと僕は思うんです。というのは、日本人は農耕民族です。昔から近所の農家同士が、人手や農機具を融通しあいながら米や野菜をつくってきた。弱肉強食の狩猟民族の論理とは違うわけです。
世の中の動きを、30年ぐらい先を見ないといけない。
危機ほど楽しいものはない。困難と出合うたびにそう思う。克服することで、会社がますます強くなるからだ。
ここに5個だけつくる製品サンプルの設計図があるとします。そこにちょっとしたミスでもあれば、私はそのミスを指摘して技術の担当者を徹底的に叱りつけます。こんなとき、たいてい本人は不満そうな顔をします。それでも、私はこんなことが2度とないようにしつこく厳重に注意を与えます。これで会社が損をしたとしても、たかが5万円程度のものでしょう。だからこそ、私はこれ以上がないほど叱るのです。
社員の意識が変われば会社も変わる。
貧しい農家で育っただけに、私は社員の誰よりも人の苦しみを知っています。一般の従業員がどれだけ解雇を心配しているかもよくわかります。だから、そんな恐ろしいことを私は絶対にしません。堀を埋められ城壁を壊されても、雇用だけは守り抜きます。当社にとって雇用は「天守閣」なのです。
小さな事業で成功して満足したり、長期政権が不必要に続いたりすると、経営がマンネリに陥る。このマンネリが会社を潰す。
永守重信のすべての名言