矢野博丈
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好調なときに、「いつかはダメになる、こんなことが長く続くわけがない」と恐れおののく力が、会社の力だと思う。
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いま思えば、商品を100円均一で売ったのは、安くしすぎでした。安さは、企業が生き残る条件ではないのです。物には価値に合った適正な価格があります。100円均一は、そんな当たり前のことをわからなくしてしまいました。いまは100円だけではなく、200円とか、2000円といった価格の商品も販売しています。
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商品を販売するうえで、誰しも「こういう商品を売りたい」とか「ビジネスはこうあるべき」という理念やこだわりを持っているでしょう。ただ、それは哲学であって結論ではありません。哲学は自分で決めるものですが、結論はお客さんが決めます。この違いが判らず、自分の哲学こそ結論だと勘違いしてしまうと、お客さんから見放されてしまいます。
20世紀の企業経営は、成長を前提としていました。しかし、21世紀は明らかにそうではありません。21世紀の人間は、たくましくなければいけません。成長しなくてもいいけれど、日々の営みを積み重ね、執念深く自分の弱みを知り、備える必要があります。
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商人に恰好をつける余裕はない。お客様に満足してもらうために社員を鍛えないといけないし、そのためにはひたむきに怒り続けないといけない。それが商人に求められる謙虚さだ。
もちろんPOSだって万能ではありません。小売店は店の方からも「これを売りたい!お客さんに使ってほしい!」と仕掛けることも大事です。お客さんの反応がよかったものを売るだけでは、後手に回ってしまいますから。
本に書いてある考えやノウハウが現場で通用しないのは、決して間違っているからではない。会社の規模が違えば適した方法は異なるし、時代背景や景気の状況によってもやり方は変わってくる。そこを考慮せずに表面的なノウハウだけを取り入れようとするから失敗することになる。
逆風だから何もしないというのなら、もっと逆風が来る。
悲しみや、苦しみや、痛みの中をさまようことで、人間の年輪はできる。やはり鍛えられながら、人間というものは、できていくものだと思います。
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環境が変われば最適な方法が変わる。これはもう仕方がない。けれども、環境が変わっても変わらずに役立つものがある。それが努力だと私は思っている。自分の役に立つかどうかわからん他人のノウハウを吸収するより、自分で努力する力を磨いた方がよほどいい。
いくらお金を持っていたり、地位があったりする人でも、性格が悪ければ人は離れていく。人間関係は人の心が絡むことだから、こうすればこうなる、という単純な方法はないけれど、必要なことをあえて言うなら「性格を磨く」ことが大事だろう。
本ばかり読んでいたりセミナーに一生懸命通っても、仕事ができるようにはなりません。人間として成長するためには、確かに勉強は大切。だけど、座学で学んだ知識は実際にはそのまま通用しません。やはり頼りになるのは、自分の体験から得た知識。そこを履き違えたらいけない。
アイテム数を「絞る」のではなくて、売れているものを「抽出する」ことができるのがPOSのいい点ですね。最初からアイテムを絞るのは、売る側の独善的な決めつけにすぎません。しかしPOSなら、店頭に並べた商品の中から実際にお客さんが高く評価しているものが実績としてわかります。じつは私もそこを混同していて、「要は売れそうなアイテムに絞るんだろ」と言ったら、「社長、絞るんじゃなくて抽出するんです」と社員に怒られましたね。
世の中には、才能が豊かな人もいる。でも本当の天才は、少年野球のころからエースで4番だ。大部分の人はそうじゃない。自分に才能がないことに気づいて、とにかく努力しなければいけない。それしか生き残る方法はない。
怒れる人間が何人いるかが強い企業と弱い企業の差だと思います。
性格を磨くには、ひとことで言うのは難しいが、「嫌なものは嫌」「自分さえよければそれでいい」という考え方に支配されないように、普段から心がけるしかないと思う。自分のためじゃなく、周りのために何ができるかを考えていれば、気が付いたときには周りから認められる人になっている。性格を磨くというのは、きっとそういうもんじゃないだろうか。
以前は、POSで、お客さんはベーシックなものを選んで早く買い物を済ませたいという傾向が強くなってきた。そういう状況では、売れないアイテムを並べておく意味はないので、POSを使って何が売れていて、何が売れていないのかを把握できるようにしました。
私と話したことがある人はよく知っていると思うけれど、私はダジャレやジョークが大好きで、隙があればどんどん会話の中に挟み込む。休憩時間や食事のときの会話だけじゃなく、仕事中でもジョークを思いついたら、すかさず口にする。なぜ私がジョークを言うかというと、それは場を明るくしたいから。もちろん、仕事は真剣にやるもの。かといって、しかめっ面でやっていても上手くいくというものでもない。どうせやるなら、楽しく明るくやった方がいいに決まっている。
一回叱ったくらいでよくなるなら誰も苦労はしない。人は繰り返し何度も何度も叱られてようやく身につく。
商売が順調なときも、100円という安さだけではいずれ飽きられてしまわないかと、ずっと不安でした。
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