矢野博丈
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会社が大きくなりすぎることは恐ろしいと、ずっと思ってきました。流通業が栄枯盛衰を繰り返してきた歴史からもわかるように、小売業のオーバーストアは非常に恐ろしい。「オーバーストアは地獄じゃけ、あまりたくさん店を出さんでいい」と社員にも繰り返し言ってきました。
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時代が大きく変わったのは、やはりバブルの後だったと思います。私自身は景気が悪く前から、「いつか会社が潰れる」と不安におびえながら経営をしていました。世の中が好景気で浮かれているときも、株や不動産には手を出さず、ひたすら本業に集中して、今日明日を生き延びることだけを考えていました。
明るく店をやっていると、そのお客さんが何も買わなくても、ほかのお客さんが引き寄せられてくる。やはり明るさは、接客の基本なんだね。
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「人よりたくさん稼ごう」「あいつより出世しよう」というのは20世紀の価値観です。いまは「勝つこと」ではなく「生き延びること」を考えることが必要です。まわりがバタバタと倒れていく中、生き残っていれば、それだけで儲けもの。勝ち負けなんてどうでもいい、生きるか死ぬかの時代になったことを私たちは自覚すべきだと思います。
頑張れば大きくなれた20世紀と違って、21世紀は生き延びるために頑張らなければなりません。20世紀は信念・戦略・完成がキーワードでしたが、21世紀はどんどん変わる時代です。最近は、大創産業が成功してきたパターンややり方もすべて否定され始めました。
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ダイソーはモンゴルにお店を出しました。有望な市場というわけではありません。でも、何か変化を社内に与え続けないと、組織は駄目になってしまうと思ってやってみた。
お客様にはすぐ飽きられるものです。ずーっとずーっと恐くて、眠れなかったんです。
じつは、5年ほど前から「もしかしたら、もう会社はつぶれないかもしれない」と思うようになりました。業績が悪化してもどこかが買ってくれるだろうと。そうしてある程度安定してから、自分は人間として劣化してしまったなと感じるようになりました。つぶれるかもしれないという恐怖心があったからこそここまでやってこれたのです。
積み重ねた経験から出てきたノウハウは参考になる。だから耳を傾けるなら、自分でいろいろと苦労を重ねてきた人の言葉だろう。
20世紀が「攻め続ける時代」だったとすれば、21世紀は「守り続ける時代」になるでしょう。野球でも何でも、攻めるときの方が楽しいけれど、いくら攻めてもそれ以上に失点するのがいまの時代なんです。会社を大きくして成長を目指すのではなくて、とにかく足元を固めて倒産しないことに全力を注ぐ。そうでなければ、これからは生き残れないと思います。
腐ったらいけない。運が悪いときほど、自分は成長する機会を人より多くもらえたんだと考えた方がいい。
海外展開で一番最初は、100円均一と同じコンセプトで店を出せば海外でも売れるだろうと思って始めました。しかし、そうではありませんでした。海外市場で本気で成功しようと思えば、物流などインフラも整備して入っていかなければなりません。店をただ出しても売れないのです。
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商品に対してお客様が持つ価値観と価格の相関関係を、慎重に見極めなければなりません。
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会社が永遠に成長し続けることなんてありません。それは20世紀にだけ許された価値観で、いまはもう通用しないと心得た方がいいと思います。20世紀後半は、いいことだけが起こり続けた特異な時代だったんです。
一回叱ったくらいでよくなるなら誰も苦労はしない。人は繰り返し何度も何度も叱られてようやく身につく。
人間には、恵まれない幸せと、恵まれる不幸せというのがあるのです。私は運にも才能にも恵まれませんでした。運は神様が決めること。才能がないのは自分。運も才能もないという弱さ、怖さ、おぞましさ。神様は私に目の前のことを一生懸命やる以外に選択肢をくれませんでした。何度も職を変えて試行錯誤しながら、生き延びたくて頑張りました。
私は、会社というものは、いつかは駄目になるものと考えています。だからしばらく前までは、入社式で新入社員に「大創産業はあと5年でつぶれます」とスピーチしていました。もちろん、意図的に倒産させるつもりはありませんが、本気でそう思っていました。
焦る必要はまったくない。一歩ずつでも、自分をいい方向に導いていけばいいんだよ。
世の中には、才能が豊かな人もいる。でも本当の天才は、少年野球のころからエースで4番だ。大部分の人はそうじゃない。自分に才能がないことに気づいて、とにかく努力しなければいけない。それしか生き残る方法はない。
海外で全然売れないというありがたい経験があったから、まず物流などインフラを整備してから市場に入るようになったわけです。
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