野村克也
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スカウトで入った人間は当然、契約金が入る。しかし俺のようなテスト生は契約金ゼロ。給料も契約選手の半額以下。テスト生あがりという事実は、間違いなく俺のコンプレックスになった。俺はそれを「奴らには負けたくない!」という闘争心に変えた。
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大きな舞台になればなるほど、勝負は技術だけにとどまらない。人間そのものの対決になる。
経験を活かすには、3つの心構えが不可欠。ひとつは「問題意識を持つこと」、2つ目は「他人の痛みを知ること」、そして3つ目は「節度を持つこと」。
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俺は自分が歩んできた野球での経験しか話さないし、それしかできない。おかげさまで、いろんなところから講演の話もいただくけど、そればかりさ。どんな世界でも通じることがあるんだろうね。
「弘法筆を選ばず」という言葉は、書の腕も一流だった弘法大師のような達人は「どんな道具を使ってでも、いい仕事ができる」という意味だ。しかし俺は道具にこだわる者こそが、一流のプロだと思う。道具が変われば結果が変わることを、味わってきたからな。
親の背中を見て子供は育つというが、それは仕事も野球も一緒。監督やリーダーの背中を見て選手は育つもんだよ。
戦いには、気機―――の四つがある。
事前のシミュレーションが大切です。野村野球というのは、ひと言でいえば「準備野球」ですから。
正しい努力をできることは野球選手として成功するための必須条件だといってもいいでしょう。これは、私の指導方針の大きな柱でもあります。方向違いの努力に走って、自らの才能を潰してしまう選手を数多く見てきましたから。
ボヤキは永遠なり。
どうやったらライバルとの競争に勝てるか考えたとき、1日24時間の使い方の問題だ、と思った。
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才能には限界がある。でも、頭脳に限界はない。
今年から俺がヤクルトの監督になったが、大きな責任と覚悟を持って監督をやるつもりだ。一人が誰かを支えて「人」になるように、みんなも誰かを支えてほしい。そして、本気で、覚悟を決めて野球に臨んでほしい。
第1段階は「強い欲を持つ」ことだ。「優勝したい!」「稼ぎたい!」。こうした目標や夢があれば、「絶対に勝ちたい!」という執念が宿るもんだよ。すると「勝つには何をすればいいか」「足りないものは何か」と自ら努力し始める。
先入観は罪、偏見は悪、初めの勝ちは、嘘の勝ち。
ダメなリーダーとは、自分の成績のことしか考えてない人間だよ。昔からいるでしょ、あの大投手やあの大打者とか、なぁ。
不器用でも一流になれる人がいる。そこには必ず哲学があります。不器用な人は、器用な人ならしないですむ苦労をしなければいけませんから、自ずと独自の工夫、哲学が生まれてくる。これは持って生まれたものではありませんから、一度身につくと強いんです。器用な人は、もう一工夫、もう少しの地道な努力が足りないことが多いので、短い勝負で一時的に勝つことはあっても、長期戦になれば、最後は必ず不器用が勝つんです。
試合前から勝負は始まっている。先発オーダーからの読み合いも必要だ。
現場に足を運ばないと、得られない情報がある。目で、耳で、肌で感じる。選手やチームの雰囲気は現場でしか感じられない。座学で知恵や教養はつく。しかし、直接見て、触れた「経験」から学び取る情報や気づきには、敵わないものがある。
仕事道具にこだわる人間は、仕事に対する貪欲さを常に持っている。だから、成果をあげられるのかもしれん。
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