畑村洋太郎
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たいていの人たちは皆、真面目に一生懸命働いています。ですが、その真面目の質が問題なのです。成功への方程式を上手くやるということだけの真面目さではなく、「もし問題が起きるとしたら何か」と考える真面目さが必要だと思うのです。
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創造力を身につける上でまず第一に必要なのは、決められた課題に解を出すことではなく、自分で課題を設定する能力です。
相手に伝わりにくそうな言葉があれば、その言葉が使われていた社会的状況や、言葉を使っていた人々の生活や考え方についても一緒に言及してみましょう。背景を同時に伝えることで、言葉の意味をより深く相手に伝えられるはずです。
暗黙知はいくら文章化してマニュアルを作り込んでも共有できません。マニュアルで伝えられるのは、知識の基本構造のみです。そこに個々人の経験した情報を付け加えても、同じテンプレートのない相手には拒絶されてしまうだけです。
マニュアルも現場に即さないものになっているケースが意外にあります。工場で従業員がロボットの検査をする際に、ロボットを囲む柵外から行うように決められていたが、実際には柵内で動く様子を見ないと本当の不具合がわからず、中に入って自己を起こしたという例もありました。でも悲観する必要はありません。失敗は必ず多くのことを教えてくれますから。
新たな行動を何も起こさないというのは、ある意味での失敗なのです。
本来、文章と図や絵には等価性があり、量などの制限がなければ、どちらでも情報伝達が可能です。それを踏まえたうえで、相手に伝わりにくい文章は図や絵で、図や絵は文章で補う工夫が必要です。
企業は皆、組織が分化し、それぞれが自分の持ち場で効率よく働くことが重視される仕組みになっています。改革が叫ばれ続けていることですが、やはり細分化の弊害は残っていると思います。
印象記は誰かに見せることを前提としていませんが、書くときは人に見せても伝わるように整理しています。第三者が見ても理解できるということは、観察した事象を自分がきちんと抽象化・知識化できているということを意味しています。抽象化・知識化していない雑記は、単なる感想文です。知見と呼べるレベルまで高めてこそ、あとで自分の仕事に活かすことができます。
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自分で考えて自分で失敗するべきで、そうしないと新たな道は開けない。
効率化のために、企業はいろんな場面でマニュアルを精緻に作り、成功への筋道を確保しようとします。しかし、最近の工場の事故が示すように、それには必ず漏れがあるのです。どれだけ隙間なく問題をつぶしてマニュアルを作ったように思っても、漏れはあるものなのです。だからこそ、物事を進める際には、失敗した場合から発想し、そのためにいま何をすべきかという考え方が大事だと思うのです。
私の場合、アウトプットした文章を寝かせるのではなく、書く前に思考を熟成させることを意識しています。いきなり書きはじめると、インパクトが強いだけの情報に思考が振り回されることがありますが、時間を空けると、余分なものが削ぎ落とされて大事な情報だけが残ります。もちろん情報を寝かせている間にも、頭はフル回転しています。
英語の言いかえを考えるときに限られますが、私がよく活用するのは、ウェブスターの英英辞典です。この辞典は、概念を他の言葉で代替するのではなく、それを構成する要素について解説を試みています。さらに嬉しいのは、初出がいつで、時代とともに概念がどのように変化したのかという時間軸まで加わっている点です。時間軸を加えると、概念を立体的に把握しやすくなります。これは日本の辞書に見られない特徴です。
価値のあるテーマを設定するには、自分の目でものを見て、考えて、決めて、行動するしかありません。何を解くべきかを教えてくれる人は誰もいません。自分で仮説を立て、試行錯誤を繰り返して課題を見つけていくほかないのです。
いまの企業の中では、真面目ということの質が変わっていないだろうか。最近、頻発する工場の火災や爆発事故を見てそう感じています。私は組織や人の犯した様々な失敗を研究し、その中から新たな知恵を学ぶ失敗学というものに取り組んでいます。この視点で見ると、いまのビジネスマンたちは自分で考えるということを忘れかけていないかと思えるのです。「もし問題が起きるとしたら何か」と考える真面目さが必要だと思うのです。
安全な道が一番危険な道になる。
相手に正確かつわかりやすく伝えるためには、文章かビジュアルかという二者択一に陥るのではなく、お互いを補完し合うような形で使うことが理想です。写真で具体的に現場を見せて、文章を書きこんで事実を補足します。こうすると文章とビジュアルの相乗効果で、「1+1」が「2」どころか「5」にも「10」にもなるのです。
結局ね、数に強くなりたいと願うなら、本を読んでいるだけではダメなんです。数字を作って、暗算して、電卓を必死に叩かないと。頭と手を必死に動かして数字センスを鍛えましょう。
放っておくと、失敗は成長する。
相手に分かりやすく伝えるために、表現をかみ砕いたり、やさしい言葉に置き換える工夫は、多くの人が実践してきていることでしょう。ただ、言葉の置き換えには注意が必要です。言葉は別の言葉と一対一で等価に対応しているわけではないからです。たとえば「コモンセンス」という言葉を辞書で引けば、「常識」や「良識」といった訳語があてられています。ただ、日本語に置き換えると微妙にニュアンスが変わってしまうのです。
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