夏目漱石
4
精神的に向上心のない者は馬鹿だ。
2
ああ、苦しい、今、死にたくない。
のどかな春の日を鳴き尽くし、鳴きあかし、また鳴き暮らさなければ気が済まんと見える。その上どこまでも登って行く、いつまでも登って行く。雲雀はきっと雲の中で死ぬに相違ない。登り詰めた揚句は、流れて雲に入って、漂うているうちに形は消えてなくなって、ただ声だけが空の裡に残るのかもしれない。
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離れればいくら親しくってもそれきりになる代わりに、いっしょにいさえすれば、たとい敵同士でもどうにかこうにかなるものだ。つまりそれが人間なんだろう。
ナポレオンでもアレキサンダーでも、勝って満足したものは一人もいない。
恋は罪悪ですよ。
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自由な書を読み、自由な事を言ひ、自由な事を書かんことを希望いたし喉。
のんきと見える人々も、心の底をたたいてみると、どこか悲しい音がする。
私は常からこう考えています。第一に貴方がたは自分の個性が発展できるような場所に尻を落ち付けべく、自分のぴたりと合った仕事を発見するまで邁進しなければ一生の不幸であると。
3
色を見るものは形を見ず、形を見るものは質を見ず。
嬉しい恋が積もれば、恋をせぬ昔がかえって恋しかろ。
みだりに過去に執着するなかれ、いたずらに将来に望を属するなかれ、渾身の力を込めて現在に働けというのが、私の主義なのである。
恐れてはいけません。暗いものをじっと見つめて、その中から、あなたの参考になるものをおつかみなさい。
その一人の人は、人間全体を代表していると同時に、その人一人を代表している。
何か素晴らしいことを達成するための努力というものは、決して無駄にならないことを覚えていなさい。
言葉を用いるは人の識見次第。
真面目に考えよ。誠実に語れ。摯実に行え。汝の現今に播く種はやがて汝の収むべき未来となって現わるべし。
人間の定義を言うと、ほかに何にもない。ただ入らざることを捏造して自ら苦しんでいる者だと言えば、それで充分だ。
今日まで生き延びたから色々の漱石を御目にかける事が出来た。これから十年後には、また十年後の漱石が出来る。
恋心というやつ、いくら罵りわめいたところで、おいそれと胸のとりでを出ていくものでありますまい。
夏目漱石のすべての名言