上西京一郎
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東京ディズニーランドの事業価値は、幸せな時間を過ごしていただくのが原点。それは開業以来同じ。ハード、ソフト両面で、いかにハピネスを感じてもらうか。どうホスピタリティを提供するか。そう考えながら投資し、施策を打ってきました。
この職場で働いてよかったと思ってもらえる環境を整備していくことが、サービスの向上につながっていく。
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値上げについて何年ごとといった基準はないのですが、考え方はあります。パークのバリューが値上げをしてもいいと思われるレベルに1つ、2つ上がったときには、アトラクションなどに投資しているので値上げもするということです。もうひとつ大事なのはやはり市場調査といいますか価格感度ですね。これはしっかりと見極めながら、じゃあ300円なのか、400円なのかと最終的にジャッジしていく。これを繰り返していくということです。
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すべてのことに言えますが、嫌々やってうまくいく仕事はありません。誇りと楽しみがないと、創意工夫が出てきません。
投資額が偏らないように、1年以内に偏らないようにバランスよくやることを心がけています。たとえば今年7月にオープンする「トイ・ストーリー・マニア」。あれも検討してから今年まで、4~5年かかっているんです。
キャストがよい仕事をしたら、それをきちっと認め、褒めること。自分の仕事が認められたら、誰しもモチベーションが上がります。私自身、そうでした。間違いなく普遍的なものでしょう。それをいかに組織の中に仕組みとして埋め込むかです。
世の中に出てから、いかに自分に足りない部分があるかを自覚しました。会社の先輩、同僚、部下……みんないいところを持っていて、それぞれ個性があり、そこから自分にないものを学ぶことができます。学んでも自分ではできないところもあるかもしれませんが、みんなのいいところをしっかり見ていれば、少しでも自分が成長できるのではないでしょうか。
ゲストに喜んでいただきたいという気持ちを持っていることで、アイデアは生まれるもの。
ディズニーの哲学は、来園されたゲストにハピネスに受け入れられてきました。もし、利益優先だったら、価値は守られていなかったでしょう。
現場からの提案を年に一度募集する「アイ・ハブ・アイデア」などの仕組みで吸い上げられるものも多くあります。しかし、一番大事なのはそうした施策を通さなくても、モノが言える環境をつくることです。それは経営者の大きな役割です。
リピーターを獲得するには、まずはハード面でパークへの関心を常に持っていただくこと。もうひとつ大切なのは、そのハードを活かす「人」の部分ですね。キャストの心を持って対応する。これを続けることだと思います。
何でもかんでも効率性を追求すれば、短期的にはもっと大きな利益を出せるでしょう。しかし、ほかの部分で手間を省くと結果的に良くないことが起きる可能性が高いとなれば、やはり手をかけなければなりません。
加賀美の思いの中にネガティブな気持ちが残ってしまう。そうあってはならないと。
入園者をしっかり満足させなければ、新規のお客様もリピーターも増えない。
私どもは装置産業でコストがかかりますが、ハードの更新はやはり続けるしかありません。毎年の予算でも固定費の部分はかなり高いので、数字を見ると「もっとどうにかならないかな」という気持ちは正直あります。多少苦しい時期も当然ありますけれども、それでもやり続けるということです。
社長に就任してから、「変えることをタブー視し、既存のものに触れないのはやめよう。ゲストにとって何が最善か、すべてをゼロから見直してほしい」と社員に伝えました。
私どもはキャストの方の信頼感も醸成されるのです。
最も大事にしていることは、お客様の体験価値。私たちはそれを「ハピネス」と呼んでいます。
目に見えない体験価値を高めるのは、キャストのほかに、実はもう一つあります。それは新しいアイデアです。これも、褒められる体験が新たなアイデアの創出を生み、ゲストの喜びに結びつくという好循環が回っていけば、東京ディズニーランドでしか得られない新しい体験価値が常に創造されていくと確信しています。
消費者は敏感だから、価値のないものにはお金を払わない。
上西京一郎のすべての名言