山内溥
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これからの娯楽業界の発展のためには、むしろこういった新たな技術を互いに公開・交流することが大切。
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今、ゲーム市場を語っている人には本当にゲームを知らない人が多すぎる。シェアにしても米国のように調査機関があるわけでもなく、トイザらスでは異なる。プレイステーションを買っている人はどのソフトで遊ぼうという気がなく、ムードで買っている人だろう。
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海外戦略はどうなるかということになりますが、結局、だれでもできるものをつくっていてはだめだということです。だれでもつくれるものは、価格意識が強ければ価格競争に巻き込まれるのは決まっているわけです。だから、自分のところしか、出せないものがつくれたら最高です。しかも、それが大衆の懐勘定と折り合いがつき、しかも多くの人たちが初めて体験するような珍しさと楽しさとおもしろさを味わわすことができさえすれば、これは円高でも何でも戦えます。そういう新しい新製品の開発ができるかできないのかということが決め手になってきます。
3DOを見て、いかにもハード屋だなと痛切に思うんです。バーッとアドバルーンを打ち上げて、そしてソフト屋集まれと言うわけです。日本でもやりました。そして、いまソフト会社は100社申し込みが来た、これから続々参加すると言っているわけです。冗談じゃないよと言うんです。いま世界でいったい何百社のソフト屋がゲームソフトづくりをやっているかと。そして、ソフトも1000か、2000か、3000か知りませんけれども、それだけたくさんの種類が出て、その中でいったい売れるソフトは何点なのか。売れないソフトを作っている圧倒的多数のソフトメーカーが参加すると言って、それが100社になろうと、500社になろうと、それは何なのですか。そんなものは絶対にユーザーを説得できない。
遊び方にパテントは無いわけです。
運を認めないといけない。運を実力だと錯覚するということは、これほど愚かなことはないんです。経営者としてね。ところが、人間ですからついつい運の存在を無視して「俺の力だ。俺のやり方が良かったんだ」と言いたいんですわ、人というものはね。それは駄目。
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僕個人の意見を言うとね、およそ物事に100%ということはあり得ない。人間ですから。だから「99%駄目だ」ということは言えても「100%駄目だ」ということは言えないんですよ。人間ですから。そこで僕は言っているんですけどもね、「あれは、99.99%駄目だ」と言っているんです。
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任天堂でいえば、今の娯楽ビジネスは僕一代で十分だと思う。だから好きにやらしてもらっている。次の社長は僕の路線を引き継ぐ必要はない。次の社長の個性で会社を経営すればいいんです。その結果、会社が傾き、株が紙クズ同然になってもいいんですよ。
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皆さん、任天堂の戦略とか秘密とか、なにか特別の大層なものがあると思って、それを期待されているようですが、そんなものはない。このビジネスがいつまで続くのか、次をどうするのか、あるいは長期戦略とか、そんなもの何もない。
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ハードの価格競争だとか、ソフトをおまけにつけてまで、ハードを売ったら勝ちだとか、そんな発想は通用しない。ハードウェアをいくら広げてもだめなんです。ソフトがそれにスライドして、ついてこないとだめなんです。そんな戦い方はハード体質の戦い方であって、本来のソフト化路線とは違うからだめです。
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プレイステーションはDVDプレーヤーでもありますから、DVDプレーヤーとしては価値があると思うんです。でも、ゲーム機としては問題がある。ソフトが作りにくいんですね。やっぱりハードは、ソフト屋がソフトを作りやすいハードを設計しないとだめなんですよ。作りにくいハードを設計したら、ソフト屋もコストアップになるし、思うことはなかなかできない状態になってきますから、それはものすごくソフト屋にとってはマイナスですね。
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私はこれまでソフト制作をお願いしますといったことは一度もない。やるのも、やめるのも自由。むしろやめてほしい。
プレイステーションでソニーが独り勝ちしていると言われてから何年たっている?
努力したからうまくいった、と言う人がいるのは構わない。でも自分は違う。努力したから成功するとは限らないと思っている。苦労だって経営者ならしていない人などいないから、自分が特に苦労したとは思わない。振り返ると何となくこうなっていた。運が良かっただけだ。
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いま進めているのは、ゲームで遊んでいる人たちに、「一回自分でゲームをつくってみませんか」という呼びかけをやろうということです。何万人か集まってきたら、ネットワークでそれを結んで、そしてゲーム作りのいろいろなノウハウとか、情報をそこへ送っていくということですね。たとえばそういう人間が五万人か、十万人かいたとしたら、そこから才能ある人が浮かび上がってくるということも考えています。
評論家が何も知らずに、知ったかぶりしてしゃべる。アナリストもよく知らずにリポートを書く。そんなことは世界中、よくあることなんです。しかし、ゲームビジネスの場合は、当事者がゲームを知らないので困ってしまいます。
世界的なゲームソフト販売の低迷を考えれば今の日本のゲーム関連株は高すぎる。販売現場では消費者のゲーム離れが起こっている。「PS2」を見れば分かる。ソフト販売がゲーム機の販売本数を下回っている。本物そっくりで高精細な映画のようなゲームなんてナンセンスだ。
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パソコンOSという特定の分野でたまたま成功し、独占的地位を守ることに精を出してきたマイクロソフトが、安易に手を出せるような世界ではない。このことは、マイクロソフトのような質の違う会社には絶対分からない。分かったとしたら、それこそ神様だ。
これまで同様、楽しさと面白さを模索し続けていくだけだ。その結果優れたゲームができれば望ましい。今後、売り上げの減少があるかもしれないが、それは仕方ないのではないか。岩田聡社長はゲームソフトの企画者出身だから任天堂の中だけでなく、他社の有能な技術者の発想も取り入れて面白いゲームを作るだろう。すぐには難しいだろうが、一年程度経てば私の社長時代からの変化が目に見えて出ると思う。
大容量ゲームは駄目。こんなことをしていたら世界中のメーカーがつぶれてしまうだろう。重厚長大なゲームは飽きられている。ゲームは常に新しい楽しさを開発し、ひたすら完成度を高めていくことが本質である。
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