山内溥
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プレイステーションはDVDプレーヤーでもありますから、DVDプレーヤーとしては価値があると思うんです。でも、ゲーム機としては問題がある。ソフトが作りにくいんですね。やっぱりハードは、ソフト屋がソフトを作りやすいハードを設計しないとだめなんですよ。作りにくいハードを設計したら、ソフト屋もコストアップになるし、思うことはなかなかできない状態になってきますから、それはものすごくソフト屋にとってはマイナスですね。
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私はこれまでソフト制作をお願いしますといったことは一度もない。やるのも、やめるのも自由。むしろやめてほしい。
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努力したからうまくいった、と言う人がいるのは構わない。でも自分は違う。努力したから成功するとは限らないと思っている。苦労だって経営者ならしていない人などいないから、自分が特に苦労したとは思わない。振り返ると何となくこうなっていた。運が良かっただけだ。
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いま進めているのは、ゲームで遊んでいる人たちに、「一回自分でゲームをつくってみませんか」という呼びかけをやろうということです。何万人か集まってきたら、ネットワークでそれを結んで、そしてゲーム作りのいろいろなノウハウとか、情報をそこへ送っていくということですね。たとえばそういう人間が五万人か、十万人かいたとしたら、そこから才能ある人が浮かび上がってくるということも考えています。
評論家が何も知らずに、知ったかぶりしてしゃべる。アナリストもよく知らずにリポートを書く。そんなことは世界中、よくあることなんです。しかし、ゲームビジネスの場合は、当事者がゲームを知らないので困ってしまいます。
明日のことは誰にも全く分からない。明日ソニーが負けるかもしれない。それがゲームビジネスなんです。そういうことが、いわば我々のビジネスの基本なんです。
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僕たちのビジネスというのは、勝ったら天に昇るけれども、負けたら地に沈む。
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パソコンOSという特定の分野でたまたま成功し、独占的地位を守ることに精を出してきたマイクロソフトが、安易に手を出せるような世界ではない。このことは、マイクロソフトのような質の違う会社には絶対分からない。分かったとしたら、それこそ神様だ。
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これまで同様、楽しさと面白さを模索し続けていくだけだ。その結果優れたゲームができれば望ましい。今後、売り上げの減少があるかもしれないが、それは仕方ないのではないか。岩田聡社長はゲームソフトの企画者出身だから任天堂の中だけでなく、他社の有能な技術者の発想も取り入れて面白いゲームを作るだろう。すぐには難しいだろうが、一年程度経てば私の社長時代からの変化が目に見えて出ると思う。
運です。運が良かったんです。それを「この結果は俺の経営がうまかったんだ」とか「俺に力があったんだ」なんて思うと、もう駄目ですね。運です。
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経営の世界は流動的であり、いつまでも成長し続ける保証はどこにもない。そして、予想しなかったことが起きても「私は関係がない」と経営者は言えない。だから、体質を強化してなにが起ころうとも社員や取引先がショックを受けない会社をつくる、それが私の仕事だ。
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結局、私たちの業界は物を作って物を売っています。いい物を安く作って、さらに合理化して一層安く作る。果てしない競争です。
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メーカーはソフトを一度売って利益を得た立場にあるわけで、それを買った人が転売しようと捨てようと、個人的にはその人の自由ではないかと思う。ソフト会社はユーザーがすぐ飽きて売らないような、長く持ってもらえるソフトを作ればよい。
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ゲームソフトについては今後、売れるものと売れないものの差が歴然としてくる。毎年、多数のソフトが出回るが、ヒット作品の種類は減るだろう。ただ、売れ筋の製品の販売本数は落ち込むことはない。一番遊びたいと思うソフトは景気が悪くなっても懐が悪くなっても消費者は購入する。
その勝利の信念をゲーム機ビジネスにそのまま持ち込もうというのなら、「全く勝算はないから今のうちにやめとき」と言いたい。Xboxは日本では完敗状態だ。飛躍の可能性は限りなくゼロに近い。欧米でも敗色濃厚だ。ゲーム機ビジネスというのは、パソコンOSとは根本的に違う世界なのだ。彼らにはそれが分かっていない。ゲーム機事業の赤字が今はかすり傷程度かもしれないが、次第にそうでなくなるだろう。「勝つまでやる」と言っているようだが、まるでベトナム戦争の泥沼に突っ込んでいった米国を思わせる。
世の中の景気が悪くなっており、ゲーム機業界だけに日が当たり不況知らずであり続けられるはずはない。不景気で可処分所得は減り、一般大衆が遊びに回すことのできるお金はどんどん制限されている。そうした限られたお金がどう配分されるかが、今後の市場を占うポイントになる。景気が悪い、悪いと叫ばれると、消費者心理にも影響を与え、ゲーム機業界にも及んでこないはずはない。
任天堂というのは、独りぼっちの企業なのです。独りぼっちの路線を歩んでいるのだということを最近つくづく感じます。
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私はいま、経営体制から離れていますし、これから先も私自身が経営に口出しすることはありません。そこで辞めるにあたって、ひとつ提案をしています。かつて人々が考えたことのないような発想の転換をして、そういうハードを作っていく。そしてそれに対応するハードを作っていくべきなのです。しかもそのソフトは、いま現在作っているソフトに比べて短い時間と低いコストで作れ、これまでのものとは明確に違うという認識をユーザーに持ってもらえるようなものです。話だけを聞いてもらえると、「そんなものが作れるのか?」と言われそうですけど、そういう挑戦をし続けるのが任天堂のビジネスですし、私が言い続けてきた「任天堂のソフト化路線」というのは、実はそういうことを志向することでありました。そんなことを、私からの提案として新経営陣に残しました。そのソフトが具体的にどんなものかは言えませんが、おそらく彼らは近い将来、少なくとも私が生きているうちに、市場に送りだしてくれるだろうと期待しています。
同じことをよく聞かされるんですが、何があるんかと僕は言うんですよ。ユニークという企業では、東京のほうがよっぽど多いですよ。それでも京都にユニークな企業が多いといわれるのは、町のスケールに比してという意味だと思うけれどもね。しかし、京都の企業にユニークさなんてそんなにありませんよ。僕が見る限り。
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任天堂は東京を相手に商売してるんやない。世界や。
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