岡田武史
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自由なところから自由な発想って出てこないんですよ。縛りがあるから、それを破って驚くような発想が出てくる。
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僕は時間にもうるさいです。ミーティングに遅れてニヤニヤしている若い選手に「みなに一言謝れ、どうして一人の人間として謝れない」と言ったことがあります。
例えば2トップなんか、2人が開いているのは嫌いなんです。必ず1人がこうやったら、もう1人はこう動くというふうに基本的な約束事は作っておきたいと思う。
スポーツも最初は真似から始まるって、ある程度のところまでは行く。でもそこから先は独自性がなければ通用しない。
サッカーなんて勝負事で相手も勝とうと必死でやっているのだから細かい原因なんて追究してもしょうがない。負ける事もある。
究極のエンジョイっていうのは何かって言ったら自分の責任でリスクを冒すってこと。そこが最高に面白いところ。言われたことをこなすだけじゃ面白くもくそもないだろうと。でもリスクを冒して失敗したら俺は怒る。「リスクを冒して失敗しても褒めよう」なんてそれではリスクじゃなくなる。
企業は社会貢献しないと存在しないはず。だから誰を喜ばせたいのか、もう一度見直してみることも大事かもしれません。
犯罪心理学で「ブロークン・ウインドウ理論」というのがありますよね。窓が割れているビルとそうでないビルとでは、割れているビルのほうが泥棒が入りやすいということ。人間は美しい場所のほうが悪いことはできないという心理を表しています。裏を返せば、人間は美しい場所にいること、美しいことをすることによって、すごく幸福感を得られると思うんです。だから善いことを続ける企業というのは、「美しい企業」でもあると思います。美しいから、その周りにはいつもみんなのハッピーがある。日本にそういう企業が増えれば、本当に幸せな社会になると思いますよ。
知ってる?自殺するのは人間だけなんだよ。動物は絶対自殺なんてしない、とにかく本能で生きてこうとする。人間は先のことを心配しすぎるから悩んで自殺しようと思っちゃうんだよ。先の事を考えても何がどうなるかなんて分からないんだから、今を一生懸命やるしかない。考えても仕方ないでしょ?
監督の仕事でも、最後にものをいうのは直感。そういう感性はどん底を経験すると持ちやすい。
僕は自分で経営をやってみて、初めは夜中にガバッと目が覚めるくらい危機感がありました。だから全部自分でやらないと気が済まなかった。でも、あるときスポンサーから「最近の岡田さん面白くない」と言われて、そうか、自分がすべきことはビジョンや夢を語ることだと気づいたんです。それで最近は社員に任せるようにしています。
「動物は今を精一杯生きている。でも人間は、済んだことを悔やんで今できない。先のことを心配して今できない。俺はそういうのは大嫌いだ。今できることをやってくれ」。
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命がけでやって、うまくいかなければそのときだと開き直った。
FC今治のオーナーになるにあたり、改めて今治の街を歩いてみたら、デパートだった場所が更地になっていたり、商店街がシャッターだらけだったり……。そこで、いくらサッカーで夢を実現しても、自分たちが立っている場所が廃れてしまったら意味がないと気づきました。どうせやるなら街ぐるみで元気にならないといけないというビジョンを持つようになったのです。
やはり自ら経験することは強い。だから僕は社員に自由にやらせる。
練習で100%の力を出さない選手は使わない。俺は監督だから11人しか使えない。使われなければやっていられないという選手は出ていってくれ。しかし力を出し切り、俺を嫌いでも、向かってくる選手を俺は見捨てない。1年間、面倒を見る。1試合も出られなくても、上手くなったと評価させる自信はある。
最初のうちは、いろいろなところで夢を語って歩いているだけで、お金や人がどんどん集まってくるという感じでした。ところが、実際に経営を始めてみると、すぐに現実の厳しさに打ちのめされました。正直、経営がこんなに大変だとは思いもしませんでした。もちろんサッカーの監督にもプレッシャーはあります。ただ、その質が全然違うのです。一番苦しいのは、途中でやめられないこと。個人で戦っている選手や監督は、結果が出なければ自分が辞めるのみです。ただ、経営者の両肩には従業員とその家族の生活が乗っていて、自分だけ逃げ出すわけにはいかない。60名におよぶ選手やスタッフたちに、何があっても月末には給料を払わなければならない。プレッシャーで寝られないなんて日本代表監督時代すらなかったのに、オーナーになってからは資金繰りが気になって、夜中に何度も目が覚めるのです。これまで経営者向けに講演をすることもあったのですが、いかに自分が何も知らずに語っていたかに気づかされました。
試合に出ないと伸びないという言葉があるが、そうは言い切れない。練習で力を付けないと試合に出る事、試合で活躍する事などはできないのだ。
一番大事なのは危機感と理念を全員で共有すること。
子供時代からプレーモデルや哲学をきちんとしたメソッドで叩き込んで、正しいサッカーの型を作るべき。型にはめると自由な発想ができなくなると言われがちですが、そうではありません。守破離という言葉もあるように、型があってそれを守るから、やがてそれを破り離れようという進化が始まり、その過程で新しい発想が生まれる。それはサッカーに限らず、あらゆる分野で言えることかもしれません。
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