ニーチェ
2
アメリカ人の息せき切った慌ただしい仕事ぶり、新世界の真の悪徳は早くも感染によって旧ヨーロッパを野蛮化し、まったく奇妙な精神喪失状態を蔓延させはじめた。すでに我々は休息をとることを恥じるようになった。ゆっくりと熟考することは、ほとんど良心の呵責を伴うようになった。我々は株式新聞に目を注ぎながら昼食をとり、時計を手にして考える。絶えず何かを逃しはしまいかと思う者のように生きている。何もしないよりは何でもいいからせよという原理がすべての文化の高級な趣味の息の根を止める。
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あなたにとってもっとも人間的なこと。それは、誰にも恥ずかしい思いをさせないことである。
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今のこの人生を、もう一度そっくりそのまま繰り返してもかまわないという生き方をしてみよ。
われわれのうちで、最も勇気のある者でさえ、自分が本当に知っていることに対する勇気を持つのは稀なことにすぎない。
独創的–何か新しいものを初めて観察することではなく、古いもの、古くから知られていたもの、あるいは誰の目にもふれていたが見逃されていたものを、新しいもののように観察することが、真に独創的な頭脳の証拠である。
3
科学者が天才視されないのは、単なる理性の児戯にすぎない。
学問によって確認されるのは真理なのだろうか。むしろ、自分で自分を確認しているだけなのではなかろうか。
友への同情は、堅い殻の下にひそんでいるのがいい。
苦しみをともにするのではなく、喜びをともにすることが友人をつくる。
キリスト教徒はただひとりしかいなかった。そして、その人は十字架の上で死んだ。
生きるとはなんのことか…生きるとは…死にかけているようものを、絶えず自分から突き放していくことである。
恋愛感情の中には、いつも若干の狂気が潜んでいる。とは言っても、狂気の中にもまた、いつも若干の理性が潜んでいるものである。
もっと喜び楽しむことを学ぶこと、それこそ他人を苦しめたり、苦しめようと考えたりすることを忘れさせる最善の方法である。
過小評価するより過大評価する方が、判断力の欠如を完璧に暴露してしまう。
脱皮できない蛇は滅びる。その意見を取り替えていくことを妨げられた精神たちも同様だ。それは精神ではなくなる。
5
復讐と恋愛においては、女は男よりも野蛮である。
私はひとりでいることにすっかり慣れ親しんでいるので、決して自分を他人と比較するようなことはせず、静かな楽しい気分で自分との対話に打ち興じ、笑いさえ交えて孤独の生活を紡ぎ続ける。
学者は本をあちこちひっくり返して調べるだけで、しまいには自分の頭で考える能力をすっかり失ってしまう。本をひっくり返さなければ、何も考えられないのだ。
あらゆる種類の確信に拘束されない自由さは、懐疑家の意思の強さに屈している。
静かに横たわって、のんびりして、待っていること、辛抱すること。だが、それこそ、考えるということではないか!
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