開高健
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あるときロンドンを名所探訪で歩きまわっていたら、まったく偶然に一枚の銅板に出会わしたことがある。それはというのである。私の釣りは技も心もまだまだこの一句から遠いところにあり、むしろ川岸にたつと、いよいよ心乱れてならないのである。
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月並みこそは黄金。
とにかくいうべきことはハッキリといっておく必要がある。無益か有益かはやってみなければわからないが、いうべきことはいわねばならぬ。
入ってきて人生と叫び出て行って死と叫ぶ。
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良い質問には答えが半分隠されている。
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右の目は熱く、左の目は冷たく、心には氷の炎を持て。
思いぞ屈してこころ滅びる夜は、油砥石をとりだしてきて、鈎をせっせと研ぐ。
大人と子供のちがいは持っている玩具の値段のちがいだけである。
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もっと遊べ。
波のなかに岩があるたくさんの獣が遊んでいる。
教えるものが教えられるのが教育の理想である。
サイゴンでは毎日のようにプラスチック爆弾が破裂して、大半は無告の民が死んで行くわけですね。キャバレーの女性のバラバラの肉体、血まみれの腸、目玉、太ももを忘れようとしても忘れられないけれども、いざ書こうとすると、道端のハイビスカスの花がどう揺れていたかがよみがえってくる。
森羅万象に多情多恨たれ。
いいか、諸君、イギリス人のアダ名はビーフイーターということになっている。あるローストビーフ気ちがいのイギリス人は、牧場の草を見て、こんないい草を食べた牛はどんなにうまいだろうかと思って唾を呑んだという話がある。この話を笑うのはいいが、よろず物事は徹底しなければいけないのだ。
朝露の一滴にも天と地が映っている。
明日、世界が滅びるとしても今日、あなたはリンゴの木を植える。
東南アジアへ出かけていく折があれば必ず、ネズミ料理を食べることにしている。その肉はあっさいりとして食用ガエルやトリ肉に似ているが、カエルのように水っぽくはなく、トリよりは野性味があり、もっとコクがあって精妙である。
海が鳴る夜は人も答えねばなりません。
右の眼は冷たくなければならず左の眼は熱くなければならないのである。いつも心に氷の焔をつけておくことである。
漂えど沈まず。
開高健のすべての名言