開高健
1
漂えど沈まず。
0
しばらくぶりで出会ったとき、握手をして、さてそれから、その後いろいろなことがありました、という意味のことをいうのに、「橋の下をたくさんの水が流れました」という。
私は鍛錬訓練が普通にできる人が好き。役者の場合鍛錬訓練はお箸の上げ下ろしと一緒。
犬好きも猫好きも、どこか病むか傷ついているかという点では完全に一致しているのではないかと思う。
海が鳴る夜は人も答えねばなりません。
右の眼は冷たくなければならず左の眼は熱くなければならないのである。いつも心に氷の焔をつけておくことである。
2
ハンティングの体験は深いものだったね。一発のライフルの銃声が引き起こしたものはいっぱいありまして、私はいまも戸惑っているようなところがある。
海を愛するのは賢者であり、山を愛するのは聖者である。
生まれるのは、偶然生きるのは、苦痛死ぬのは、厄介。
朝露の一滴にも天と地が映っている。
自然を温存するためには人間は謙虚にならなければならない。
明日、世界が滅びるとしても今日、あなたはリンゴの木を植える。
無駄を恐れてはいけないし、無駄を軽蔑してはいけない。何が無駄で何が無駄でないかはわからないんだ。
教えるものが教えられるのが教育の理想である。
波のなかに岩があるたくさんの獣が遊んでいる。
釣師にはいろいろと厄介な気質があり、いい道具なら一も二もなくとびつくという面がある。また道具のよしあしを見わけることにかけては、日ごろどんなケチンボでもコウと狙いをつけた釣道具にはあきれるほどの大金を投じて悔いないから、デパートにさまよいこんだ女よりもまだ目が鋭いのである。
外国語が読めても外国人のことはわからない。外国語が話せても、わからない。外国に住んでも、わからない。外国人を知るには文学によるしかない。それも一流の文学ではなく、二流の文学である。
入ってきて人生と叫び出て行って死と叫ぶ。
《正直が最善の策》というのは熟慮、権謀を尽くしたあげくの人が吐く痛苦の言葉だ。
大人と子供のちがいは持っている玩具の値段のちがいだけである。
開高健のすべての名言