井上靖
1
本当のことを言うことで、本当のことを言う相手を持つことで、お前はこの世に生きて来たことを肯定しようとしている。自分の人生に意義を見出そうとしている。
2
どうやら幸福というものは、ひどく平凡なことの中にある。静かな眼、おだやかな心、健やかな体、平穏な日々、そうした状態以外の何ものでもないらしい。
本当のことを平気で言える相手もなかったとしたら、お前はこれまでの長い一生を、何のために生きて来たか判らないことになる。
結婚して何年かすると、みんな相手が古ぼけて見えて来るものだ。なぜ、自分はこんな相手と結婚したんだろう。
0
夜毎、空には神秘な星の光が輝き、地上には正しく生きることを考え、悩みながら人間が生きている!
友情というものは、お互いに相手に対する尊敬と親愛の念の絶えざる持続がなければならぬものである。
借金しようが、泥棒しようが、一生涯にたくさん金をつかっちまった奴が、やはり金持ちと呼ばれるべきでしょう。
聞き取れるか取れないかの声で、救けてくれ、と言った。
百万の富を抱いても、一生涯に少ししか費わなかったら、これは問題なく貧乏人です。
若い人たちはもっと積極的に一期一会の精神を、日々の生活の中に生かすべきである。
父に世話になろうがなるまいが、たとえ小さい時棄てられたとしても、それでもなお、子供は父というものにかばわれているのである。
旅から苦難が消えてしまったといっしょに、旅情の宝石もまた消えてしまったのである。
どんな幸福な人間でも、一度は死にたいほど悲しくてつらいことがある。
人間何をしてもいいが、あまり自分を不幸にしてはいけない。
期待していただいたのに、力及ばず、申し訳ない。
すべての子供にとって父親というものは常に完全でなければならぬもので、ここに子供と父親の悲劇の根源はあるようである。
地球上で二人が顔を合わせたら、そこには一つの約束がある。何だといったら相手の立場に立って物を考えよう。「仁」ですね。いわゆる思いやりです。
私は誰よりも恵まれた出生を持っていると思った。
人生は所詮の一語に尽きる。
万事、焦ることはない、ゆっくりやればいつか事は成る。
井上靖のすべての名言