糸井重里
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僕がいつもしている「「ほぼ日」ハラマキ」も、僕自身の強い動機から生まれたものです。11年前に販売を始めたのですが、今では、ほぼ日の主力商品にまで成長しました。今日も着けています。ほら。ある友達が「だまされたと思ってしてみて」とくれた腹巻きがきっかけでした。僕はお腹を壊しがちなところがあったんですが、着けてみたら本当に調子がいい。だけど、らくだ色の冴えない感じですから、ボロボロになっても、新しい物を買う気にならなかったんです。だったら、格好悪くない腹巻をつくればいいと。
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僕は「仕事をするのが嫌」というのが前提としてあるんです。小さいときから会社に勤めるのが怖くてしょうがなくて。夢に見るほど嫌でした。「何時から何時まで会社に来い」と言われて喜んで来る人がいるとは、僕はいまも思っていません。皆いつでも「どこかに遊びに行きたい」と思っている。そのことを前提に組織や仕事のあり方について考えてきたというのが本音なんですね。
何でも最短最速がいいとは限らない。
やっぱり、人間に余白は大切です。多忙な人に休養が必要なように、予定にやたら盲従せずに、立ち止まって自分を見つめる時間を一日のどこかで持ってほしい。
いいたいことが「10」あるなら、それをとにかく「1」にしぼって伝える。
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順番のつくような、どんな価値を持っていても、その順番は、もっとすごいやつに追い抜かれるし、その価値は、年齢や動機の喪失やなんかとともに、だんだん減っていってしまうだろうけれど、「いまここに、あいつがいたらなぁ」って思われることの価値は、永遠なんだよ。
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目上とか目下ということばにとらわれずに、あらゆる人のことを「ばかにしちゃだめだ」と、根っから思っている人のすることは、いい感じです。逆に、「敬意」の対象を限定していて、多くの人を「こんなやつ」と思っている人のすることは、いやな感じというふうに思えるのではないでしょうか。
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僕はね、相手が言っていることの中身よりも、それが善意に基づいているのか悪意なのかだけを考えるんですよ。
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若い頃は、つまんないものでも俺のコピーで売ってみせる、という思いがありました。でもそうじゃないんですね。誰がコピーライターでも売れる商品を作るべきで、広告はそのお手伝いにすぎません。本物以上に見せてはいけないのです。ですから「ほぼ日」のキャッチフレーズは、広告屋が作ったとは思えないものになっています。そしてこれは会社についても同じで、「うちの会社はこんなにいい会社です」ということは言いたくない。言葉ではなく、その中身をよくしていきたいと考えています。
いま世間で「ラジオ体操をしよう」というメッセージの本が40万部を超える人気になっています。ラジオ体操はいいに決まっている。だけど、なぜしないのか。腹巻きと同じで、「格好悪かつた」からです。だったら、格好悪くないものを作ればいい。
僕は実は昔より今のほうが働いています。それは楽しくて仕方がないから。働くことは大変だとか、仕事をナメちやいけないとか、生きていくためにお金を稼がなきゃいけないとか言う人が僕の周りにもたくさんいたけれど、僕はそうは思いません。働くことは、やっぱり楽しい。大変なことも難しいことももちろんあるけれど、それでも面白い。それが今、一番伝えたいメッセージなのです。
どんな仕事でも、仕上がりの絵は想像できても、それを使ったり、参加したりするお客さんの姿までイメージできている人は、案外少ないのではないでしょうか。ほぼ日の社員は、そのビジョンが割と共有されています。だから、イベント会場を選ぶ際も、「ここで開催するとお客さんは喜んでくれるかな」とか、「少しイメージと違うからほかも探してみよう」という迅速な判断に結びつく。
世界の七不思議ばかりじゃない。シンセサイザーだって、小説だって。今日のお天気も、おいしい料理の味つけも、編みこみのセーターも、いい音楽も、人間のカラダも、美しいティーカップも。みんなみんな、心ときめかせるものは不思議でいっぱいだ。
三度三度のめしを、よく噛んで、おいしく食べて。決まった時間に気分よくうんこして、たのしみのひとつとしてお風呂にゆっくりつかって、よく寝て、すっきり起きて、いつもおだやかに笑顔でいるような人に、だれも勝てるとは思わないほうがいい。
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生き残るブランドを作るためには、この商品ならではという要素が欠かせない。
「恥ずかしがり」であることは、恥ずかしいことじゃないと思います。ただ、いつになっても、いくつになっても「恥ずかしがり」の役割をやっているというのは、図々しすぎるような気がするんですよね。
僕のやっていることにユニークな部分があるとしたら、「本当は誰も、働きたいなんて思ってないんじゃないか」という疑いから組織のあり方や仕事の仕方を考えてきたことです。そして、この点に秘密があるんじゃないかと考えています。
「バカになれる」ということが、「バカにならない」ことと同じように、人間には大切なことだと思います。
スタッフ用のTシャツをつくろうとしていたら、「それ売れるんじゃないですかね」と言ったやつがいて、やってみたら、2300円のTシャツが約3千枚売れました。この780万円が、ほぼ日の最初の売り上げのようなものです。これは二重の意味でうれしかった。自分たちのためのTシャツがほかの人にも支持されたとい喜び。そしてお金が入ってくることの喜びです。以来、様々な商品を販売してきましたが、基本的にはこのTシャツと同じように、自分たちが欲しい、必要だ、というものをつくり、それを売っています。
収増益を続けるためには、自分たちがやりたいと思えるような、さらに新しいことを生み出す必要がある。
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