安田佳生
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「考える」には、ふたつのポイントがあります。ひとつめは、「何を考えるかを考える」ということです。ふたつめは、考えると決めたことを長く、深く、たくさん考える、つまり「どのくらい考えるか」ということです。
自分を信じるのに、理由はいらない。
過去の実績で未来が決まるわけではない。逆である。未来の実績が過去に対する評価を決定しているのだ。
大きく値上げするということによって、既存の顧客を入れ替えることができます。従来の顧客を捨て、より高額で質の良い商品を買う顧客を手に入れるのですから、長い目で見れば、非常に大きな利益とブランド力を得る可能性をつかむということです。
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ほとんどの人は、ひとつめの答えが出したら、そこで考えるのをやめてしまいます。答えが出たら、思考が自動的にストップするようになっているのです。しかしそれは、もったいないと思います。答えが出ても考え続けるのです。3時間考えた人と、5時間考えた人では、たいして差は出ません。しかし、3時間考えた人と3年間考えた人では全然違います。
企業は人なりといいます。どんな製品やサービスも、それをつくるのは人であり、売るのも人です。そこで、多くの経営者は、ビジネスマンなど最前線で働く人たちをイメージして社員を採用しようとします。しかし私は、勝負のカギは中間層が握っていると考えています。いわば30代前半のマネジャークラスです。大手と中小企業では、この層の厚さが違います。私は長年、中小企業を中心とした採用活動をサポートして核になる人物をつかんだ会社が伸びるということを実感しています。
たかだか二十年くらい生きてきただけで、まだ人生の本番・正念場にも立っていない若者が、自分の能力や才能に見切りをつけるなど、とんでもない思い上がりである。
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私がワイキューブを設立したときは、確固たる事業欲などを持っていたわけではありません。若くして起業した理由は、一旗揚げて、金と自由を手にしようと考えたからです。しかし、金儲けを最終目的にしても人は集まりません。やがて、経営者に必要なのは、みんなで一緒に追いかける夢。つまり大義を掲げられるかどうかではないかと気が付きました。
安いものを多く売って儲けられる時代は終わった。中小企業にとって、現在の顧客や商品にしがみつき、価格を下げたり、逆にちまちま値上げすることで勝負するというのは、命取りに等しい。人口が減少するこれからの日本で勝ち続けるには、最終的に一つの商品に多くの金を払ってくれる顧客をつかまえるほかないのだから。多少ランニングコストをかけても、常により良いものを模索し、ブランド力を高め、社員一人当たり売上を増やしていくしかない。
いつも成功できるとは限りません。むしろ失敗の方が多いかもしれません。では何を目指すべきかというと、失敗のレベルを上げることです。成功であるか失敗であるかは、あくまで結果です。棒高跳びで5メートルを失敗したという場合、4メートル99センチで限りなく成功に近い失敗と、2メートルしか跳べなかった失敗では、明らかに失敗のレベルが異なっています。
人が本当の能力を発揮できない理由の90パーセントは、自分を信じていないことにある。
ひとつのテーマを2、3年考え続けるのは難しいものです。しかし、世の中には実際、よくこのビジネスでこれだけの売上を達成できたと驚くような中小企業が数多く存在します。そのような会社の経営者は、自分のテーマを諦めずにしつこく考え続けた人たちです。
これまで、コンサルティングの仕事で5000人を超える社長たちに会いました。彼らの経営目的を聞くと、会社の拡大。つまり、株式公開とか、売上を10倍にするとか、社員数を増やすといったことを挙げます。しかし、それは社長の野心であって大義とは違います。多くのトップのこんな考えは、優秀な人には簡単に見透かされてしまいます。
経営が厳しい、もしくは社会的要因などでわずかに価格を上乗せするなら、それを機にいっそ2倍3倍の価格にして、商品を変えてしまった方がいい。一割程度の値上げで変えられることなどほとんどなく、買う側のメリットなどないのだから、結果、既存顧客の何割かを失うだけです。しかし、価格を3倍にすれば、かなりの労力と資金を費やして、商品を変化させることができます。
悔いとは「できなかった」という結果に対して抱く感情ではない。悔いとは、「やらなかった」というプロセスに対して抱く感情だ。
ビジネスで重視されるのは結果です。しかし同時にプロセスの重要性も忘れてはいけません。ひとつのことを長く、しつこく考えると、思考は深まっていきます。答えが出ても考え続ける習慣によって、プロセスの精度だけでなく、成功とみなされる確率も上がるはずです。
私はもともと、それほど本を読む方ではありません。それでも、会社を立ち上げた際、なかば仕方なく最先端のビジネス書を読み、世の中のトレンドをつかもうとしたのですが、難しくて頭に入りませんでした。そこで読み始めたのが歴史小説でした。歴史という流れの中に、時代を超えた、普遍の考え方を見出し、経営に役立てられればと考えたのです。
数年前に顧客を捨てた経験がある。当時の我が社にとって、その契約さえ取れれば一年間安泰というほどの超優良顧客だった。しかし、売上の大部分を一顧客が占めるということは、その顧客に振り回され、さらなる成長のために新しいことをする道がふさがれることになる。だから、あえて捨てる決断をした。それまでどんな要求にも応える姿勢でいたのだが、それをやめ、結果この顧客との取引はなくなった。しかしこのあと、売上が飛躍的に伸びることになった。このときの決断がなければ、会社はいまの規模にまで成長しなかったと思う。
断言してもいいが、就職活動の成功は、人生の成功と何の関係もない。
一番メディアの取材を受けた東京・市ケ谷のオフィスの内装に2億円ぐらいかけましたが、あれは自分の中では成功だったと思っています。取材が増えて、広告費に換算したら年間3億円分ぐらいの記事が出ましたし、問い合わせ件数もそれまで年間60件ぐらいだったのが1万件に増えました。
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