佐藤可士和
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仕事でも何でも、何か思考し始めるときには必ず前提があります。大切なのは、自分が今、立っているその前提が正しいのかどうかを検証する「視点」を持つことです。この視点を持たず、検証をしないまま、例えばアイデアだけを求めて走り始めると、決して良い結果は出ません。
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どんなに良い商品でも、知ってもらわなければ意味がない。
クリエーティブの仕事はつまるところ自分の思考をどうコントロールできるかではないか。手によって描くスキルのように感じがちだが、結局、どういう概念で把握できたのか、もしくはその概念を使いこなせたのか。さらに組み合わせや再構築ができたのか。クリエーティブは抽象的なことなので、パッとそのステージにはなかなか行けない。だんだんわかってくるというのではなく、気づきがあったときに言葉にできる。
僕の仕事は言いにくいことを言わなきゃいけない仕事ですから、顧客をリスペクトすることが必要です。ビジネスを一緒にやるわけですから、基本的に尊敬しあっていないと、突っ込んだことを言うことができません。
ブランディングとは経営戦略の一つ。会社の在り方や方針を決め、それをどうやって社会に発信していくかという話。
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何度も話をするそれが一番の近道です。人間は話すことで思考や情報が整理されます。対話を重ねると何をすべきかというゴールが見えてきます。ゴールの設定をすることは非常に重要です。どこに行くべきかを共有することこそ、本当の意味でのクリエイティブな作業です。仕事がなかなか上手くいかない人は、ゴールが見えないまま走り始めてしまっているのかもしれません。
失敗や不満は大きなファクターで、そう簡単に昇華できるものではない。私自身、いまもすべて思いどおりになるわけではないから、それらにどう向き合うかは結構大きな問題だ。向き合い方がネガティブになると、あきらめに結び付き、その後の障害になってしまったりする。
僕のようなどこでも外部の立場にある人間は、対象をドライにクールに見ることができます。クライアントの現場の方々は、やはり商品などに深い思い入れがあって、その分、客観的に見られない傾向も強い。それに対して僕は、「いや、それは皆さんの思い込みであって、本当はこうではないでしょうか」と指摘することができるのです。
悩むよりも、まず決断する。仕事はそこから拓けていくもの。
仕事上の駆け引きはしません。僕の場合、相手から依頼されてコミュニケーション戦略を担当することがほとんどです。医者や弁護士の仕事に近いです。そこに駆け引きが入り込む余地はないし、相手の本質を知るためには、駆け引きをしている余裕はありません。
複数のプロジェクトを同時並行していると、やることが多くて焦ってきます。でもそこでちょこまかと手を付けても、効率はあがりません。目の前のことに集中するしかありません。
以前は僕も、アイデアとは自分の頭の中から捻り出すものだと思っていました。しかし、そうではないんだと分かってきた。僕のような何かをデザインする仕事だと、必ず対象があり、相手から依頼されます。すると、その依頼相手の中に大抵、答えがあるんです。僕がアイデアをゼロから考えるのではなくて、実は答えは目の前にあって、よく見れば自然に見えてくるという感覚ですね。
クリエーティブかどうかは、つまるところマインドの問題。能動的に何かをやろうと思っているか受け身なのか。クリエーティブの仕事は価値の転換そのものだからだ。一般の人が普段踏み込まない「感覚の領域」をフィールドにする。そこで誰もが見過ごしている物事に気づくかどうかだ。
クリエーティブのスタイルとして、結局、本質は何なのか、そう見続け、考え続けることで答えが必ず見つかっていくと思っています。枝葉を徹底的にそぎ落とし、真剣に見ようとしないと本質は見えてこない。何が本質かと考え抜かないと、それに突き当たらない。若いうちから、考え続ける習慣をつけるのが大切です。
クリエーションに関しては、大事なのはかけた時間の長さではなく、どれだけ深く集中できたかが勝負です。毎日1時間×3日よりも、3時間まとめてバシッとやった方がよかったりします。
相手の悩みを丁寧にひろいあげ、本質を見極めたうえで、見つけた課題を明解に解決していく。これはビジネスの基本。
顧客のやりたいことを否定することはありません。相手の発注力を引き出すことも含めて、僕の仕事なんです。
自分の軸を意識するには、社会の価値観としてどこに重きが置かれているかも常にウオッチしておかないといけない。
僕は結論を持ち帰ることなく、その場で決めることが多いです。忙しい同士がせっかく顔を合わせているのだから、できるだけ案件は的確なタイミングで決断したいと思っています。決定権のある方と話をする場合の最大のメリットは、その場で決断できるという点にあるのですから。
アートディレクターの仕事は、クライアントの言葉にならない思いを引き出し、社会に伝えるための的確な方法を見つけて具体化していく、いわばコミュニケーションコンサルタントのような仕事だと僕自身は捉えています。
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